2017年2月20日月曜日

リアル2ー 水戸にて9年振りに「名前を知らないけれど」を歌う

昨日は、東北&北関東4ヶ所ツアー(石巻、仙台、いわき、水戸)の最終日、水戸での2年振りのライブだった。ライブ会場のペーパームーンは、初めての会場だったけれど、もう何度も訪れたことがあるような親しみと懐かしさを感じさせる空間だった。
風邪が治りきらず、体調はあまりよくなかったけれど、客席からの熱い思いをエネルギーにして、ストーリーのある理想的なライブ空間を皆で作り上げることができたと思う。

昨夜のライブを主催してくれた「地元でライ部」代表、甲斐君との出会いは9年近く前に遡る。約4年振りに訪れた水戸での空席だらけのライブに来てくれたお客さんの1人が甲斐君だった。その夜のことは当時のブログに書き残されている。
http://rikuonet.blogspot.jp/2008/09/blog-post_24.html?m=0

そのライブの半年後、甲斐君は水戸でオレのライブを企画してくれて、その後、「もっと地方にリアルな音楽を」との思いで「地元でライ部」を立ち上げ、オレだけでなく、さまざまなツアーミュージシャンのライブを水戸で企画するようになった。昨夜のライブ空間は、「地元でライ部」の長年の積み重ねがあってこそ成り立った、一つの結晶のようなものだ。

昨夜は、感謝の気持ちも込めて、9年前のライブで甲斐君が客席からリクエストしてくれた曲「名前を知らないけれど」を、その日以来9年振りに弾き語った。


誰に頼まれたわけでもなく 今日もメロディ口づさむ
抜け殻みたいな言葉に 何度も息を吹きかけた

じっとしたままで いるなんて
とても出来やしなかったよ だから今

君に会いに来た 名前も知らないけれど

誰に頼まれたわけでもなく 今日もリズムを打ち鳴らす
東へ西へとかけ回り 余計なマネをくり返す

乾いているから濡れたいよ
翼はないけど飛びたいな だから今

君に会いに来た 名前も知らないけれど 

ー「名前も知らないけれど」より

その言葉とメロディーは、今の自分にもリアルに響いた。20数年前の自分と今の自分が重なった。
今も当時と変わらず、もがいているなあ、「もんもん」を抱えているなあと実感した。「もんもん」を燃料にしたり、ネタにして笑い飛ばす術は、当時よりは身についたかもしれないけれど、抱えている「もんもん」は今もそんなに変わらない気がする。
その思いを歌に変え、ライブで昇華させ、それを受け止めてくれる人がいるお陰で、自分は救われてきたし、どうにかここまでやってこれた。

昨夜のお客さんの中には、甲斐くん以外にも、9年前の水戸ライブに来てくれていたご夫婦がおられて、感慨深かった。あの日のライブがなければ、昨夜のライブも存在しなかった。
誇らしい夜だった。
これからも「もんもん」を糧に「リアル」を積み重ね、軽やかに方々うろつき回ってやろうと思う。

2017年1月31日火曜日

キョンさん(Dr.kyOn)のこと

2日から始まるリクオ with HOBO HOUSE BAND『Hello!Live』発売記念ツアー(2/2名古屋、2/3京都、2/5東京)に、バンドの一員として参加してくれるキョン(Dr.kyOn)さんと出会ったのは、'91年初頭だったと思うから、もう四半世紀を超える付き合いになる。その存在を認識したのはもっと前で、ボ・ガンボスが結成後初めて関西ツアーに来た時だから、もう30年くらい前かあ。オレはまだ大学生でした。

ボ・ガンボスの体験は強烈だった。当時、自分がまさに影響を受けている最中だったニューオーリンズのガンボ・ミュージックを、彼らは、祝祭感に満ちたロックンロールとして、見事に自分達のオリジナルに昇華していた。
そんな様を見せつけられて、はるか先を越されたような嫉妬を感じつつも、とうとう日本にもこんなバンドが登場したんだという興奮を感じたのを覚えている。関西の土壌から生まれたバンドであったことにも、同じ歴史を共有しているような親しみや希望を感じた。

当時のボ・ガンボスのライブには、しょっちゅう足を運んだ。同じ時期に、山口富士夫さん率いるティア・ドロップスの関西ライブにもよく足を運んでいて、そこにはボ・ガンボス結成直後の、まだ短髪で素朴さを残したキョンさんがピアノでサポート参加していた。
その頃の自分は何者でもなかったけれど、勝手にキョンさんのことをライバル視していた。時には、自分のピアノの方がキョンさんよりもいけてるんじゃないかと勘違いしたこともあったけれど、そんな思いはすぐに打ち砕かれた。ライブに足を運ぶたびに、キョンさんの演奏技術が急速に上がってゆくのを目の当たりにしたからだ。それと同時に見た目や振る舞いもどんどん洗練されて、キョンさんはさらにカッコ良くなっていった。バンドの勢いも見る度に加速する一方だった。
ボ・ガンボスはインディーズながら瞬く間に注目を浴び、自分の認識ではメジャーデビュー前の結成1、2年の頃には、バンドとしての最初のピークを既に迎えていたように思う。今思うと、その存在に影響を受けた者にとって、ボ・ガンボスは、ただの音楽ではなく、態度や姿勢を示す1つのムーブメントだったように感じる。

キョンさんとの出会いの場は、今回の公演場所の1つでもある京都の磔磔だった。ボ・ガンボスから2年程遅れてメジャーデビューした直後の磔磔での自分のワンマンライブに、キョンさんがお客として会場に現れたのだ。
自分は、ライブ中に既にその存在を客席後方に確認していた。キョンさんが自分のことを知ってくれていて、ライブに足を運んでくれたという事実にワクワクした。

ホント、若気の至りなのだが、自分はそのときのライブのアンコールで無茶な行動に出た。
「じゃあ、飛び入りゲストを紹介します。Dr.kyOn!」
なんの打ち合わせも了解もなく、ステージから勝手にキョンさんを紹介してしまったのだ。
名指しされたキョンさんは、客席後方からすくっと立ち上がり、躊躇なく歩を進め、ステージに登場した。目の前にあらわれたキョンさんは、大きくて華があった。でも、威圧感はなかった。

セッション曲には友部正人さんの日本語詞によるボブ・ディランの「I Shall be Released」を選んだ。
キョンさんにはピアノを弾いてもらうことにして、自分はピアノを離れてアコーディオンを抱えた。その場でキョンさんに曲のキーと、原曲よりもずっと速いテンポ、そして2拍目のウラにアクセントを置くセカンドライン調のアレンジを口頭で伝えた。生涯の中でも忘れられないセッションの1つとなった。
その初対面で、キョンさんはオレのすべてを受け入れてくれたような気がした。

デビューから4年程を経て、活動が思うようにいかず相当に煮詰まっていた頃、当時、ボ・ガンボスの解散を発表したばかりのキョンさんに連絡をとり、相談に乗ってもらったことがある。そのときに何の話をしたのかは、もうよく覚えていないけれど、キョンさんが「今、SMAPがいいから聴いてみるといいよ」と言っていたのが、とても印象に残っている。話していて、キョンさんの音楽の嗜好がとても幅広く、さまざまな方向にアンテナをはっているのが伝わった。
相談を受けて、キョンさんはオレのために色んなミュージシャンを集めて、セッションの場をつくってくれた。そのときに始めて共演したのが、今回のツアーにも参加し、長年自分の活動に付き合ってくれているベースの寺さん(寺岡信芳)だ。これまでの自分のステージ、アルバムの中で最も多くのベースを弾いてくれているのは、圧倒的に寺さんだ。

90年代後半からは、キョンさんと一緒に定期的に「PIANOMAN NIGHT」というピアノ奏者が集まるライブイベントを企画するようになった。そのイベントが、「CRAZY FINGERS」の結成につながった。複数のピアノ奏者が打楽器的にピアノを合奏するこのユニットは、自分のこれまでのキャリアの中でも、最もユニークで多いに盛り上がった企画だった。CRAZY FINGERSはライブだけでなく、3枚のアルバムと1枚のDVDを残した。



その後もキョンさんとは、さまざまな場所で、いろんな形で共演を繰り返している。キョンさんには多くの引き出しがあって、共演の度に開ける引き出しが違っていたり、さらに引き出しの数が増えていたりするので、毎回が新鮮で、共演の度に刺激をもらい続けている。

バンドの中でのキョンさんは指揮者のような存在だ。その中で自分は、より自由に泳がせてもらっている感じだ。キョンさんの参加によって、バンドには華やかさとメリハリ、そしてロックのガッツが注入された。
本当は、キョンさんとはHOBO HOUSE BANDで、もっとツアーができたらと思う。それだけに、今回の3公演は貴重で特別だ。色んな意味で、次につなげられたらと思う。

このブログを書きながら、キョンさんが自分のキャリアに与えてくれた影響の大きさを、あらためて感じている。
今では、キョンさんをライバルというのはおこがましい。心から尊敬すべき存在であり、自分の良き理解者だと思っている。
ー2017年1月31日(火)

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★リクオ・アルバム『Hello!Live』発売記念ライブ 〜 Hello!LIVE 2017 〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋 TOKUZO 開場18:30 開演19:30
●2/3(金)京都 磔磔 開場18:00 開演19:00
●2/5(日)東京 Zher the zoo YOYOGI 開場17:00 開演18:00
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 
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★リクオwith HOBO HOUSE BAND動画
●「あれから」

●「(what's so funny'bout)peace, love and understanding」

●アルバム告知トレイラー

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■CD「Hello!Live」HR-03¥2800(税抜)15曲入り
■DVD「Hello!Live Movie」HR-04 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906
■アルバム特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live/


2017年1月29日日曜日

絶望的な忘れっぽさを自覚して、逡巡しながら歩み続けるー「あれから」のこと

昨年リリースしたアルバム「Hello!」と先日リリースしたばかりのライブ盤「Hello!Live」に収録した「あれから」という曲は、自分自身にも問いかける曲だ。1年半前に曲ができたとき、6年近く前の、あのときの何とも言えない気持ちと、それ以降抱え続けようした問いかけを、4年の歳月を経て歌にできた気がした。https://youtu.be/ygP42ajCZc4




あれから何を終わらせたんだ
あれから何をはじめたんだろう 
ー「あれから」より

人は忘れる生き物だ。その忘れっぽさが救いになる一方で、すぐに忘れて同じ過ちを繰り返してしまうことに、絶望を感じたりもする。SNSの時代に突入してからは、自分も含めて、人々の忘れっぽさに拍車がかかった気がする。
忘れないためには、意志や知性が必要なんだと思う。増々スピードアップして大量の情報が流れてゆく時代の中で、時には立ち止まり、振り返り、逡巡する時間の大切さを、より感じるようになった。あの哀しみ、不安、畏れ、後悔、憤り、後ろめたさを忘れてしまえば、自分達の未来は閉ざされてしまうと思う。

この6年近い歳月の中で、自分が心掛けたのは「逡巡しながら、歩み続ける」ことだった気がする。極端に振り切って思考停止することを避け、グレイゾーンを行き来しながら、正しいと思う方向に向かう。もし途中で、その方向が間違いだったと思えば、改めることのできる柔軟性を維持する。実践できたかどうかは別にして、そうありたいと思い続けてきた。
その歩みの途中では、「選択」と「別れ」を避けることはできない。3.11以降の話で言えば、自分にとっては、例えば原子力発電所が別れを告げるべき存在だった。
「選択」と「別れ」には、いつも「痛み」がともなう。その「痛み」を忘れちゃいけない、「選択」からはずされた存在も忘れちゃいけない、どの方向に対しても共感のアンテナを鈍らせちゃいけないと思う。その姿勢をナイーブと言われるのなら、自分はナイーブであり続けたいと思う。
逡巡を繰り返しながらも、そうした自分の考えに関してはブレがない気がする。

あれから何を終わらせたんだ
僕らは今もためらいの中
夜空は星をなくしたまま
僕らは明日を描き出すんだ
ー「あれから」より

オバマ大統領は「民主主義はあたなだ」という言葉を残して、ホワイトハウスを去っていった。その言葉に誠実さを感じる。誰かが与えてくれた単純な物語に身を委ねたり、救世主やカリスマを求める時代が、良い時代だと思えない。
グラデーションに目を凝らしながら、丁寧に物語を紡いでゆこう、絶望的な忘れっぽさを自覚して、逡巡しながら歩み続けようと思う。
ー2017年1月29日

★リクオ・アルバム発売記念スペシャル・ライブ 〜Hello!LIVE 2017〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋・TOKUZO(得三)
●2/3(金)京都・磔磔
●2/5(日)東京代々木・Zher the zoo YOYOGI
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 


●CD「Hello!Live」HR-003¥2800(税抜)15曲入り
●DVD「Hello!Live Movie」HR-004 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906

●『Hello!Live』特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live

2017年1月24日火曜日

いくつになっても、割り切れない思いは割り切れないまま物語は続いてゆく

アルバムのリリース前後と、それに伴う発売記念ライブの前は、普段より気持ちが不安定になる。期待と現実のギャップに向き合わされるからだ。
思えば、20代のデビューの頃からずっとこの感じを繰り返している。それでも、いまだに期待し続け、トライし続けているのだから、自分でも懲りない奴だと思う。去年、自主レーベルを立ち上げてからは、より現実に向き合う機会が増えて、気持ちが振り回されることが多くなった。

活動をインディーズに移行してからの一時、作品のリリースを控えようかと考えたことがあった。リリースの度に、期待が裏切られ、自尊心を傷つけられるのがつらくなったからだ。限られた条件の中で、思うような制作ができないというジレンマにも悩まされた。
それならば、さらにツアー暮らしに没頭して、集まってくれた目の前のお客さん達と一期一会を積み重ねた方が、ストレスも少なく充実感を得られるし、精神的にも良いと思った。

でも、40代半ばを過ぎたあたりから、また次第に考えが変わり始めた。限られた時間を意識するようになって、「もう、そんなこと言うてられへんな。自分の欲求に正直に向き合った方が前向きやし、さらに年とってからすねたくないもんな」と考えるようになった。

長くツアー暮らしを続ける程、全国に存在する今まで自分の活動を応援、サポートしてくれた人達(もちろんお客さんも含みます)に喜んでもらいたい、各地でずっとライブを企画してくれる人達が、もう少し楽にお客さんを呼べるくらいの知名度と動員力を得て、恩返ししたいとの思いも強くなった。

ここにきて、創作意欲、制作意欲は衰えるどころか、高まり続けていて、それに平行するように承認欲求も高まっている。この年になって「承認欲求」なんて言葉を自分にあてはめることに恥ずかしさを覚えるけれど、事実だから仕方ない。多分、閉じていた蓋を開いたからだと思う。
その結果、やっかいな感情に振り回される機会が増えた。「まるで思春期みたいやな」と自分のことが笑える。
この個人的なある種のストレスと不穏な社会状況が創作につながっていて、ネタには困ることがない。そのネタをいかに料理し表現するか、試行錯誤している最中だ。
若い頃の自分と今の自分に違いがあるとすれば、そういう自分自身をネタにして笑えるタフさや俯瞰を身につけたことかもしれない。いや、それも思い上がりかな。

ここにきて、楽しみながらあがいてやろう、格好わるさも含めたその様をオープンにして見てもらえばいいんじゃないかと思う。そういう姿を若い人達はもちろん、同性代の人達にも見てもらいたい。いくつになっても、割り切れない思いは割り切れないまま物語は続いてゆくのだ。
そうしたすべての思いを音楽に昇華できたら最高だ。

最後に大切な告知です。
1月18日、自主レーベル『Hello Records』よりアルバム『Hello!Live/リクオ with HOBO HOUSE BAND』が発売となりました。ライブ会場限定販売でDVD『Hello!Live Movie』も同時発売となります。
昨年リリースしたアルバム『Hello!』のポップでカラフルな世界に、ライブの臨場感とロックのガッツが加わった、新境地となる作品だと自負してます。皆でつくりあげたあの素晴しい夜を、こうやって作品として残せてホントによかったです。多くの人達との関わりの中で、この作品を生み出せたことを誇りに思ってます。
2月に入ればリクオ with HOBO HOUSE BANDによるアルバム発売記念のライブがが3公演(2/2名古屋、2/3京都、2/5東京)開催されます。アルバム収録曲以外に新曲もこのツアーでの重要なレパートリーになります。ホント重要なライブなんで、ぜひ立ち会って下さい。お待ちしてます。http://www.rikuo.net/live-information/ 
皆さん、2017年も、応援よろしくお願いします。いい年にしましょう。
ー 2017年1月24日(火)





★リクオ・アルバム発売記念スペシャル・ライブ 〜Hello!LIVE 2017〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋・TOKUZO(得三)
●2/3(金)京都・磔磔
●2/5(日)東京代々木・Zher the zoo YOYOGI
詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 
【メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2

CD「Hello!Live」HR-003¥2800(税抜)15曲入り
DVD「Hello!Live Movie」HR-004 ¥2800(税抜)21曲入り

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タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
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2016年12月14日水曜日

「ナイーブ」への共感ー「peace, love and understanding」を歌うことについて

ニック・ロウがオリジナルで、エルヴィス・コステロが歌って広く知られるようになった名曲「(what's so funny'bout)peace, love and understanding」に日本語詞をつけて、3年程前から時々ステージでカヴァーするようになった。今年の11月から各地で13公演行われた中川敬くん(ソウルフラワーユニオン)との2人ツアーでも、この曲をメニューに入れて、毎晩演奏した。
3日前には、リクオ with HOBO HOUSE BANDによるステージで演奏されたこの曲の動画が、YouTubeにアップされた。https://youtu.be/4SrMbyEv3L8

「愛と平和と相互理解を求めるってことの、一体何がおかしいんだ?」

ニック・ロウのそんな問いかけに対して、自分なりの言葉をのせて歌おうと思うに至ったのは、穏やかならざる時代の空気が関係している。
世界的な流れとして、不寛容、排外主義、レイシズム、両極化による2項対立が進む中で、自分達が他者と共存してゆく上での最低限の共通認識が崩れはじめている、以前は「当たり前」だったはずのことが、そうではなくなり始めている不安を感じる。

これまでの「当たり前」が、「キレイゴト」や「お花畑」として否定され、差別意識を含んだ扇動的な言葉が「本音」として人々から喝采を浴びるようになった。お墨付きを得た「本音」は暴力的な感情の塊となって広がり、制御できない状況が各地で起こり始めている。英国のEU離脱やアメリカの大統領選挙の結果も、そのような状況の表れだと思える。
ネットを通じたデマとプロパガンダが横行するpost-truthと呼ばれる時代の中で、分断は深まり、他者への想像力は奪われ、どんどん感情のタガが外れてゆく怖さを感じる。

ここ数年は、リベラルの側から、「そのような感情に対しては、こちらも理性や知性ではなく感情で対抗すべきだ。下品な言動もありだ」といった意味合いの意見を目や耳にすることが多くなった。実際にそのような姿勢に基づいた行動や運動が、一定の成果をもたらしていると思う。
ただ、自分にはそういうやり方ができない。それは、自分が安全で恵まれた場所にいるからではないかと自問したりもする。
相対主義に寄りかかった冷笑主義には共感できないし、楽しさだけでなく正しさも共有したいと思う一方で、振りかざされた「正義」に戸惑いながら立ちすくむ自分も存在する。

ナイーブ過ぎるのだろうか?
自らの暴力性を自覚しながらも、相手を記号化して、感情的、暴力的(実際に肉体を傷つけるわけではないです。念のため)に対抗する手法には抵抗を感じる。酒の席で面と向かってなら、激しく感情的に言い合うことができるし、場合によっては胸ぐらを掴み合うことぐらいは辞さないけれど、それは、互いの感情を受け止めて、傷つけあいながらも受け身を取り合うことが暗黙の前提になっているからだ。

「ナイーブ」って、ニュアンスの微妙な言葉だと思う。その言葉が、脆さを含んだ世間知らずで役立たずなメンタルとして、否定的に使われる場合があることも自覚している。自分の中のそうしたメンタルに引け目を感じる一方で、「弱さ」を保ち「役立たず」であり続けたい、そんな立場の人間も存在すべきではないかとも思う。
このへんの気持ちを言葉にするのは難しい。
振り子が大きく左右に振れる中で、振り切れずに立ちすくむのにも、それなりの意志と覚悟が必要な時代になったと感じる。

ニック・ロウの書いた「(what's so funny'bout)peace, love and understanding」という曲に、自分が共感する理由の1つは、「ナイーブ」を維持し続けながら「正しさ」を確認しようとうする意志を感じるからだ。そうした思いを、あくまでもポップスとして表現しようとする姿勢に勇気づけられるのだ。https://www.youtube.com/watch?v=q_u2OK_IKw0
そしてこの曲は、エルヴィス・コステロがカヴァーすることによって、更なるガッツを注入され、スタンダードなロックナンバーとなった。ここ数年、コステロのヴァージョンを聴くことで、何度奮い立たされたかわからない。https://youtu.be/uuYPCP2RSXA

以前、自分が音楽表現する上で心掛けていたことの1つは、「ナイーブ」との距離感だった。けれど今は「ナイーブ」を自覚し、維持することが1つのテーマになりつつある。この変化は自分よりも世の中の変化によるところが大きい。
「ナイーブ」を維持しながら、「正しさ」を確認し、日々の中で楽しみを見つけ出し、遊び続けることが、この時代の中での自分なりの抵抗だ。

ー 2016年12月14日

2016年11月18日金曜日

トランプが勝利してからの8日間

スタジオにこもって、来年1月にリリース予定のライブアルバムのミックス作業をしている最中、アメリカの大統領選でトランプの勝利が確実になったとことを、スマホのヤフーニュースで知った。悪い予感が当たってしまったなあと思った。
そう言えば、今から約15年前の9月11日にニューヨークでテロが起きたことを知ったのも、スタジオでのミックス作業中だった。動揺は、あの時の方が大きかった。トランプの勝利も、9・11に匹敵する大きな出来事だと思うけれど、世界各地で起こり始めたナショナリズムの台頭、不寛容、経済格差の拡がり、移民排斥の動き、繰り返されるテロのニュースなどが、こういった事態を予感させ、ある程度の心の準備をすませていた気がする。

大統領選も大事だけれど、今一番大切なことは最終段階に入ったミックス作業に集中することだった。すぐに、気持ちを切り替えて、作業に没頭した。

レコーディングのミックス作業で、常に自分の課題となっていたのが、コンプレッサー(以下「コンプ」と略)との付き合い方だった。自分はライブでもレコーディングでもコンプありきのサウンド作りが好みではない。音圧や迫力が増す1方で、コンプを強くかけ過ぎると、音が圧縮されて平面化し、柔かさや立体感、メリハリに欠けたサウンドになってしまうのだ。
ただ、コンプそのものを否定しているわけではなく、このエフェクトとのもっとよい付き合い方ができないものかと、ずっともどかしい思いを抱き続けていた。それが、今回のミックス作業での試行錯誤で、その課題を劇的に乗り越えることができたのだ。
その成果はサウンドに如実に現れた。立体感をそこねることなく、ライブの迫力、臨場感を再現し、あの日のメモリアルなステージを1つの作品として再構築することができたのだ。

ベルリンの壁が崩壊した日である11月9日、トランプの大統領選勝利が明らかになり、共和党が上下両院で過半数を獲得し、カリフォルニアでは嗜好用大麻の合法化が可決された。そして自分は、エンジニアのモーキーとの2人3脚で、ライブCDのミックスを完成させた。不安と喜びが交錯する1日だった。

ミックス作業を終えた後は、2日間のリハーサルをはさんで、11月からスタートしていた中川敬君(ソウル・フラワー・ユニオン)とのツアーを再開し、京都へ向かった。かつて自分がアルバイトをしていたこともあるライブハウス・磔磔にて、ゲストに山口洋(HEATWAVE)と宮田和弥(ジュンスカイウォーカーズ)を迎えての2公演は、実に濃密で充実した2日間だった。
ヒロシとの久し振りの共演では、緊張と緩和の振り幅の中で自分の現在地を確認し、宮田君との初共演では、真摯な歩み寄りとオープンな姿勢がもたらす素晴しい化学反応をお客さんと共に満喫した。よく歌い、よく叫び、よく弾き、よく叩き、よく語り、よく飲んだ。
クタクタになって京都から藤沢に帰宅した後は、1日のオフを置いて、ライブCDのマスタリング作業に入った。スムーズに作業は進み、昨日レコーディングの全行程を終了した。そして、明日からまたツアーの再開。

この目まぐるしい日々の間も、アメリカの大統領選の結果のことが頭から離れなかった。
民族差別や宗教差別、女性蔑視を公言する人物がアメリカ大統領になる日が来るなんて、少し前までは想像もできなかった。そんな人物に希望を託さなきゃいけない程、今のアメリカは余裕のない状況なんだろうと思う。トランプの勝利は深刻な症状の表れだ。
こういった状況はアメリカに限ったことではない。日本でも同じような症状が進行し、トランプ的な思考や態度が、ネットやテレビを通じて、拡散され続けている。

自宅で、深夜に録画しておいたテレビ番組を見ていたら、あるコメンテーターが「政治家は道徳家ではない。だからトランプ氏の差別的発言もパフォーマンスとして許容される」といった内容を語っていた。「んなもん、パフォーマンスで許したらあかんやろ!」と、思わず心の中でつっこんでしまった。こういう発言がテレビでも堂々と流される時代の空気に怖さを感じる。
9月にアップしたブログにも同じようなことを書いたけれど、敢えて、もう一度言わせてもらう。自分が、一番恐れているのは、このような発言や思考、態度に、自分も含めて、人々が馴らされ、取り込まれてゆくことだ。このような状況に対しては、慣れることなく冷静に恐れ続けるべきだと思う。

いつからか、自分の回りの世界と、公の出来事、社会を取り巻く状況とのギャップに、戸惑いを感じるようになった。最近は、社会のネガティブな状況が少しずつ自分の回りを侵し始めているように感じることがある。
公の出来事や社会の空気に取り込まれ過ぎることなく、日常の暮らしを大切に、柔らかさを保ちながら日々を過ごしてゆきたいと思う。得てして、良くない出来事と良い出来事は、同時に起きている。良い兆しを見逃さないようにしたい。
ー2016年11月17日

2016年10月6日木曜日

「不安」についてー石田長生さんの言葉を思い出す

交流のある20歳程年下の後輩ミュージシャンと、最近飲んだときのこと。
彼がキャリアを重ねて実力をつけ、認知を上げつつある姿をみていたので、「もうバイトをやめて音楽だけでも食っていけるんじゃない?」と聞いてみた。単純に、地方ツアーの数を増やして音楽1本にしぼった方が、バイトを続けるより実入りもいいんじゃないかと思ったのだ。
そうしたら、少し戸惑ったような表情で、「音楽1本でやるのは不安だし、まだ不安定なんで、バイトをやめられないんです」との返事が返ってきた。彼の「不安」という言葉を聞いて、自分のことを振り返った。

ありがたいことに、CDデビューしてからの26年間、ずっと音楽で食わせてもらっているけれど、その間、不安から逃れられたことはない気がする。もう少し正確に説明すると、「どうにかなるさ」という楽観、「どうにかするぞ」という決意、「どうにでもなれ」という開き直り、「どうなるんやろう」という不安、それらの感情が日々立ち代わりながら同居し続けてきた感じだ。

その後輩ミュージシャンと話していて、自分が大学を卒業したばかりで、まだバイトしながら音楽をやり続けていた頃に、先輩のプロミュージシャンである石田長生さんと2人飲みさせてもらった時のことを思い出した。
一回り年の離れたオレに対して、石田さんは、えらそ振ることもなく実に素直に色んな話を聞かせてくれた。そのときに石田さんから聞いた忘れられない言葉がある。

「オレ、年取ったら野垂れ死にしそうな気がしてるねん」

そう話す石田さんは、特に深刻な風でもなく、乾いた哀愁を漂わせていた。
これから音楽で食っていきたいと考えていた当時の自分にとって、それは後にひく言葉だった。既にプロミュージシャンとしてのキャリアを重ね、これだけの評価と認知を得ている石田さんでも、そんなことを考えるのかと思った。
でも、今思えば、当時の日本では、50代以上のプロのロック、ブルース、フォーク系ミュージシャンは、まだ存在していなかったのだ。だから、自分の年代以上に、20年、30年と音楽で食い続けるイメージは湧きづらかったはずだ。それは前例のない未知の世界だったのだ。
考えてみると、あのときの石田さんって、まだ34、5歳くらいで、今の自分より、随分と年下だったのだ。当時の石田さんは、「不安」を抱えていても、肝は座っているように見えた。既に覚悟を決めていたのだと思う。「野垂れ死に」という言葉は、その覚悟の表れとして自分は受け止めた。

後輩ミュージシャンの彼がバイトをやめるべきかどうかはわからないけれど、「不安」に背を向けるよりも、そいつに向き合った方が、表現者としての説得力は増すのだろうと思う。多分、バイトを続けてもやめても、そいつが消え去ることはない気がする。
自分は、石田さんのように、「不安」に向き合い、「不安」と格闘し、「不安」を笑い飛ばし続ける音楽人生でありたいと思う。
ー2016年10月6日(木)