2016年8月19日金曜日

テレビが好きだ

テレビを観るのが好きだ。
と言うのが、憚れるような空気を感じたりするけれど、やっぱり好きだ。時間が許せば、もっとテレビを観ていたい。

特にお笑い番組が好きだ。「アメトーク」(テレビ朝日)と「ゴットタン」(テレビ東京)は毎週録画している(全部はみれないけれど)。「アメトーク」企画の中では特に「中学のときイケてない芸人」の回が印象深い。自分のイケてない過去をネタにすることでトラウマをこえてゆく芸人の姿に、笑いを超えた感動を覚えた。
「ゴットタン」の名物企画「芸人マジ歌選手権」「マジ歌ライブ」も毎回楽しみに観ている。芸人達が披露するオリジナルのお笑いソングとパフォーマンスのクオリティーの高さに、いつも驚かされる。番組を観ながら、いつのまにか同業者視点になって、自分はここまでお客さんを楽しませられるだろうかと自問している。

「ワールドプロレス」(テレビ朝日)は幼少の頃におばあちゃんと一緒に観始めてから、今もずっと見続けている。長い長い大河ドラマを観ているよう。今年の4月両国で行われたオカダカズチカ VS 内藤哲也のIWGPタイトル戦での内藤の突き抜けたパフォーマンスには唸った。殻を突き破った内藤の姿を見ていると、自分もまだまだチャレンジするぞという気にさせられる。
ジャンルは違えど、同じパフォーマーとして、お笑い芸人とプロレスラーから学ぶことは多い。

NHKのドキュメンタリーも時々観る。Eテレ「新・映像の世紀」は毎回見応えがあり、考えさせられる。
ニュースやワイドショーも観る。日曜の朝、TBSの「サンデージャポン」を観た後に、ネットで「日刊サイゾー」をチェックしたりして、俗人である自分を自覚する。

テレビドラマも時々観る。少し前まではNHKドラマ「トットてれび」を毎回楽しみに観ていた。役者、舞台セット、音楽、脚本がいい出会いを果たしていて、現場のワクワク感が画面を通して伝わってきた。今はNHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の録画が2週分程録りためられていて、早くまとめてみなきゃと思ってる。
最近、暮しの手帖編集部による「戦争中の暮しの記録」という単行本をAmazonで注文した。ドラマを通して、当時の人々の暮らしを通して戦争の姿を知ることの大切さを感じたのだ。

音楽番組も時々観る。アーティスト同士のセッションが売りのフジテレビ「FNS歌謡祭」はテレビだからこその予算と愛情のかけられた優れたエンターテインメント番組だと思う。番組を観ていると自分も出演したくなる。

それ程興味のないつもりでいたオリンピックも、テレビで試合を観戦すると、心動かされて涙腺がゆるんだりしている。卓球の愛ちゃんの涙にはぐっときたなあ。

今、自分が一番ハマってる番組は、フリースタイル(即興)のラップバトルを見せる「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日)だ。最も印象に残っているのは、ラスボスキャラの般若とチャレンジャー焚巻がバトルした回。暴力的なdisり合いからリスペクトとドラマが生まれる様はプロレスや格闘技にも通じる。
この番組を毎週録画して観るようになってから、YouTubeでもフリースタイル・バトルや日本のヒップホップをよくチェックするようになった。

同業者にはテレビ好きが少ない。若い人もめっきりテレビを観なくなったようだ。自分の回りにも部屋にテレビがないことを公言する人が増えた。とにかく、さまざまをスマートフォンとパソコンですませてしまえる時代だ。

「最近のテレビはくだらない」と言う声をよく聞くけれど、テレビ好きとしては必ずしもそうではないと言いたくなる。
「テレビは真実を伝えない」と言う人もいる。そう言う人の多くが「ネットで真実を知った」と言う。最近は、「テレビの嘘」よりも「ネットの嘘」に踊らされる人の方が増えている気がする。
テレビの中にもネットの中にも虚実は混在していて、それらを選り分けるのは自分自身だ。同じ事実も、見る側面によって見え方、捉え方は変化する。さまざまな視点を受け入れ、楽しむ余裕を持っていたい。

権力に対して腰が引けていたり、コンプライアンスを気にするあまり自粛が行き過ぎていたり、説明過多で、視聴者の想像力にゆだねるような番組が少なかったり、今のテレビを批判することはいくらでもできるだろう。それでもテレビの肩を持ちたくなるのは、年を追うごとにテレビの影響力が減ってゆくことに、不安に近い感情を覚えているからだ。
テレビの力が衰えるに従って、増々「公共の場」が減ってゆくような、人々の断絶が深まってゆくような気がしている。この感覚は、自分がテレビ全盛の時代に育ったことも関係しているのだろう。学校でも家庭でも、テレビはいつだって皆の共通の話題だったのだ。

かつては、主義主張を超えて、テレビを通じて日本中で共有できた情報や時代感覚が、今はかなり希薄になってしまった気がする。ネット社会に移行してから、情報量は爆発的に増えたけれど、個人が幅広い多面的な情報を得る機会はむしろ減っている気がする。
特にSNS上では、自分と主義主張、価値観の近い者同士ばかりがつながりやすく、共有する情報も一面的で偏ったものになりがちだ。しかも、情報を受け取る側は、そういう偏りや受け身であることに対する自覚がなく、ある種の万能感に陥りやすい。そういった認識や感覚が、立場や考えの違う人間同士の断絶をより深めているように思う。

できれば、テレビとネットは、これからも手を取り合って両立し続けてほしいと思う。映画も、CDも、レコードも、ライブ文化も残っていてほしい。
テレビを観て、ネットをやって、音楽を聴いて、本を読んで、曲書いて、外に出て、海を見て、ぼーっとして、風を感じ、季節を感じ、街に出て、映画を観て、ライブを観て、人と出会って、語り合って、ケンカして、仲直りして、飲んで騒いで、二日酔いになって、また部屋にこもってテレビを観て、音楽聴いて、曲書いて、ツアーに出て、ピアノ弾いて、歌って、また部屋にこもって、またツアーに出る。自分は、そんな暮らしをこれからも続けたい。

ー 2016年8月19日(金) 

2016年8月2日火曜日

冷静に恐れる ー ショッキングだった2つのニュースについて

この1週間で特にショッキングだったニュースが2つある。
1つは、今回の都知事選で、特定の民族に対するヘイトデモとヘイトスピーチを繰り返してきた団体の元代表者が10万を超える票を集めたことだ。団体の主張の背後にこれだけの数の市民が列をなしていると想像すると、何ともやりきれず、恐ろしさを感じる。多分、この流れは日本だけでなく世界的なもので、残念ながら、こういった排外主義はこれからもまだ広がり続けてゆくのだろう。
自分は今まで、ブログやSNS上で、不安を煽るような物言いを避けるよう心掛けてきたつもりだけれど、都知事選でこのような排外主義者が一定の支持を得たことや、トランプ氏がアメリカの大統領になりかねない状況に対しては、慣れることなく冷静に恐れるべきではないかと思う。自分の感覚では、もう1線を越えてしまっている。これは思想やイデオロギー以前の問題だ。

今年に入って、日本のメディアにもしょっちゅう登場するようになったトランプ氏を見続けていると、自分が次第に”トランプ慣れ”していることに気づく。彼に対する恐れが以前よりも薄まっているように感じるのだ。
特にテレビメディアは、意図的で有る無しに関わらず、彼のチャーミングさを表出してゆく。これまでの独裁者達がそうであったように、彼にも人を惹き付ける力があることは否定できない。だから怖い。
ああいう暴言やレイシズム、排外主義的物言いに、こちらが慣れてしまっちゃいけない。冷静に恐れるべきだと思う。
そして、今の日本を見渡せば、トランプ氏と同じように、暴言を吐きながら、レイシズム、セクシズム、排外主義、デマをまき散らす煽動家が幾人も存在する。彼らの勇ましく感情的な暴言に溜飲を下げているのは、自分と同じ一般民だ。ああいった言動が”本音”として受け入れられ、それが”普通”になってしまうことが本当に怖い。

もう1つのショッキングだったニュースは、相模原で起こった障がい者大量殺害事件だ。事件そのものに対する衝撃はもちろんのこと、犯人の考えに対して、ネット上で共感を寄せる者が多数存在することにもショックを受けた。
言葉にするのもおぞましいけれど、“障がい者抹殺思想”への同調を受け入れるような空気が、ごく1部にしても存在するという状況には、暗澹たる気分だ。
ホント当たり前のことなんだけれど、障がい者の1人1人が個別の個性を持った人間であり、彼ら1人1人を必要とし愛する家族があり、人間はそういった多様性の中で支え合って生きてゆく存在なのだという実感が、人々の中から失われて始めているのかもしれない。そのような弱い立場への不寛容な空気が犯行の背中を後押ししたのではないかとも想像してしまう。

こうした”弱者排除”と”排外主義”の傾向は、共通した背景を持っているように思える。追い込まれ疎外された者が、さらに弱い立場に攻撃を向けるという構図にも、やりきれなさを感じる。経済合理性やら自己責任やら優生思想やらを鵜呑みして、一時の万能感にひたることで、結果的に自分達の首を絞めている。
こんなふうに余裕を失いはじめた社会の中で、綺麗事ともとられてしまう自分の言葉がどこまで通じるのだろうかと考えさせられる。

「迷惑かけてありがとう」たこ八郎

「パラダイス」という曲をライブで歌うときに、エンディングの語りの部分で必ず引用する言葉だ。
色んな個性があって、それぞれに足りないところがあって、補い合って、迷惑かけたり、かけられたりしながら、互いに「ありがとう」って思える世の中の方がいいに決まっている。
ー 2016年8月2日(火)

2016年7月27日水曜日

だんだんよくする

今月10日(日)に、アルバム「Hello!」発売記念スペシャルライブの最終公演、東京下北沢GARDEN公演を終え、同日に行われた参議院選投票の結果を受け止め、少し身体を休めて、またソロツアーに出て、今週月曜にツアーから戻って、久し振りに曲作りにも取りかかったりしていたら、もう月末。週末には都知事選挙かあ。でも、やっと一息つけた感じなので、近頃を振り返っておこうとブログをアップすることにした。

10日のGARDEN公演については、ブッキングが決まった時点から、この日をひとまずの総決算にしようとの思いがあった。アルバム制作から始まった流れを、これからも続けていくのかどうか、10日のライブの内容だけでなく、そこに至るまでの現実的な結果を受けて、判断を下さなくちゃいけないとも考えていた。

取りあえず、発売記念スペシャルライブと銘打ったバンドスタイルでの名古屋、大阪、東京3公演を終えてホッとした。特に最終公演の下北沢GARDEN公演では、多く人達との関わりの中で、今までにない場を作り、一歩踏み出したパフォーマンスを展開することができたという手応えがあった。現時点で自分が見せることの出来るベストなステージだったと思う。
集まってくれたお客さん、関係者の皆さんからのダイレクトなリアクションには多いに救われた。確実に何かが変わり始めているし、自分自身が一歩踏み出せたことを実感できた。


Photo by 小山雅嗣

ガーデン公演のステージを終えた後に、何人もの知人が楽屋を尋ねてくれたのだけれど、その中の1人に業界の大先輩である伊藤銀次さんがいた。
銀次さんからは、まずこのようなありがたい言葉をいただいた。
「ついにやったね。『Hello!』の完成を経て今日エンターテイナーとしてのリクオが確立したと思う」
その後にはこんな言葉が続いた。
「今回のアルバムだけでは期待する結果は出ないかもしれなけれど、あと2枚、がんばってこの方向で作品をつくり続ければ、結果がついてくると思う。ウルフルズだって結構時間がかかったんだよ(銀次さんはブレイク前からプロデューサーとして長くウルフルズに関わり続けていたのだ)」
銀次さんの言葉を受けて、「あと2枚、この感じでアルバムつくるのは大変だなあ」と思いつつも、嬉しくて感激して、少しウルッとしそうになったくらいだ。銀次さんはこの日のライブレポートとアルバム「Hello!」の紹介を自身のFacebookとブログにもアップしてくれていて、その文章にもとても勇気づけられた。
https://www.facebook.com/ginji.ito/posts/959343164185283
http://ameblo.jp/ginji-ito/entry-12171119125.html


                                                Photo by 小山雅嗣

GAERDEN公演と参院選挙を終えて、劇的な状況の変化は起きなかった。けれど今、そのことを悲観してはいない。
参院選挙の結果と戦後4番目の投票率に低さには、やはりがっかりしたけれど、絶望はしなかった。もう少し正確に言うと、表立った結果は絶望的にも思えたけれど、選挙期間前からのさまざまな動きには希望を見いだすことができたし、それらの動きはある一定の成果をもたらした気がしている。そういった動きが各地で繋がり、一気にではなく次第にひろがってゆけばいいのではと思う。
自分は元々、極端な変化や革命を求めない保守的な一面を持った人間で、特に社会情勢において、劇的な状況の変化は、危険を伴うという意識が強いのだ。

少し一息ついてみて、アルバムをリリースしてからの自分は、結果を早急に求めて焦り過ぎていたのかなと思う。
7月10日のガーデン公演の後に、色々と判断を下そうと考えていたのだけれど、ライブを終え、これまでの状況を受けての自分の気持ちは、想像していたものとは違っていた。

少しずつ何かが変わり始めていることを実感して、今の気持ちは前向きだ。まだ始まったばかり。これからもこの歩みを懲りずに続けて、だんだんよくしていこうと思う。そう言えばオレ、「僕らのパレード」(共作:丸谷マナブ)で、そんなことを歌ってたんやよな。





今回のアルバム「Hello!」は、曲作りの段階から、聴いてくれた人達が歌に自身を重ね合わせてくれることを意識していたのだけれど、完成してみたら、パーソナルな要素も強く含んだ作品になっていた。アルバムを貫く「再生」というテーマは、自分自身のテーマでもあった。ポップで開かれた作品を作ろうと目指していたら、今の自分を投影した正直な内容になった気がする。

こういう作品をつくる事ができて、今自分がこういう形で活動を続けていられるのは、関わってくれるミュージシャンとスタッフ、応援してくれるお客さん、地方を含めた関係者の皆さんの存在があってこそだ。
自分は人と関わることが好きなんだなと思う。元々好きと言うよりは、音楽活動を積み重ねることで、孤独な作業を経て、人と関わり合い、互いを生かし合い、何かを生み出すプロセスにやりがいを感じるようになったのだ。

50歳を過ぎてからでも、面倒を引き受けて、色んな人達とのかかわり合いを続けながら、ともにときめき、いい夢を共有したいと思う。
だんだんよくしていこう。自分自身も、自分を取り巻く世界も。すべては繋がっている。
みなさん、これからもよろしくです。 
ー2012年7月27日(水)


Photo by  小山琢也

2016年7月21日木曜日

白黒を反転させないグラデーション ー 森達也監督「FAKE」を観た

公開前から気になっていた森達也監督のドキュメンタリー映画「FAKE」を、やっと観た。
語りたいことが一杯。いや、語りたい以上に語り合いたい、誰かと感想や意見を交わし合いたくなる映画だった。

噂のエンディング12分間は、期待以上だった。白黒を反転させるのではなく、あえてグラデーションを残す結末が、大きな余韻を残す。映画全体が、2極化に走る社会に対する強烈な問題提起として成り立っていて、安易な結論を許してくれない。もやもやさせされる。でも、そこがいい。さまざまな解釈を許す自由と楽しさが、この作品にはある。

映画が進むにつれて、佐村河内氏と寄り添い合う奥さんの存在が次第に大きくなってゆくのも印象に残った。この映画を2人の愛の物語として観ることもできる。あるいは、愛と信頼に支えられた佐村河内氏の再生の物語と捉えることも可能だ。
ただ、多くの感動を残しながらも、単純に感動のまま終わらせてくれないのが、この映画の真骨頂。

「さまざまな視点と解釈があるからこそ、この世界は自由で豊かで素晴しい」
映画パンフレットの中で、監督の森達也氏がこんな言葉を寄せている。
この態度は、当事者意識に欠けた厭世的態度として否定的に使われることもある「価値相対主義」とは違う、もっとリアルで丁寧、謙虚な感覚に基づいたものだと思う。
自分も、グレイゾーンを行き来し、逡巡を繰り返しながら、少しずつでも前に進んでゆきたい。この映画を観て、あらためてそう思った。

ー 2016年7月21日(木)


2016年7月8日金曜日

光は闇の中に ー 参院選とライブのこと

アルバム「Hello!」発売を記念したリクオ with HOBO HOUSE BANDによるスペシャルライブ・ツアーは、先週末の名古屋、大阪公演を終え、明後日7月10日(日)下北沢・GARDENで最終公演を迎える。その日は参院選の投票日でもある。なんだか自分の置かれている状況と参院選の状況がどこかでリンクしている気がして、ライブと投票日が重なることを、自分の中で勝手に意味付けたりしている。
「Hello!」という作品を作ってからは、自主レーベルを立ち上げ、今まで自分を知らなかった人にも音を届けたい、何とか状況を変えていこうと、元気にもがき続ける日々が続いた。
まだまだやり残したことはあるけれど、これまで現実に向き合いながら正直にやってきたということに関しては納得している。自分の欲や現実に向き合う程、無力さや限界を感じると同時に、可能性や希望も見えてくる。つまり、やってみないとわからないということだ。

時には、色々正直にぶっちゃけてる自分がかっこ悪くも思えるけれど、もう一人の自分はそういう姿をおもしろがっている。
51歳になって「あんな変なメガネをかけて、へんな格好でミュージックビデオ撮って、どうなん?」みたいなことを、人から言われるのも、ありだと思ってる。中途半端にやるよりは、振り切れたほうが面白い。すべてはネタになればOKだ。

参院選は、自分の期待する流れと照らし合わせると厳しい状況だ。
いくつものメディアが、今回の参院選で改憲勢力が3分の2議席に迫る勢いだと伝えている。3分の2に達するということは、自民党の改憲草案に基づいた日本国憲法改正への道が開かれる、戦後日本が一大転換期を迎えるということだ。
立憲主義に基づき、国家の行動を制約するために存在していた憲法が、自民党の改憲草案では、国家が国民に義務を求め
る要素が強くなっている。憲法の宛名が国家よりも国民の側への比重を強くしているのだ。

学校でも教えられた現憲法の根幹をなす三原則(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)の堅持が、改憲草案ではゆるめられている印象を受ける。3分の2の議席獲得後に政権がまず着手すると言われている「災害時の緊急事態条項の新設」の本質は戒厳令であり、独裁を許容し、国民の権利を抑圧するものではないかとの危惧もある。
原発の問題が、ほとんど選挙の争点にならないことにも強い違和感がある。忘れちゃいけないこともあるはずだ。
多くの無関心が、より時代を極端な方向に向かわせようとしている気がする。時には自分自身も、その無関心の側にいるので、えらそうに言える立場でもないのだけれど、さすがにこの状況はやばいなあと思う。

やっぱり現実にも向き合わないと、前へ行けない、希望が見えてこないというのが今の実感だ。さらに厳しい状況になる前に、世の中がもっと極端に流される前に、ちゃんと闇の中で目を凝らしたい。個を確立した上で人と繋がり、自分達で楽しいことや希望を見いだしたいと思う。う〜ん、ちょっと固すぎるかあ。

ここではないどこかではなく、たどりついた場所や与えられた場所をパラダイスにする。瞬間に全てを捧げる。その積み重ねの中で、状況を変えて行く。その基本姿勢に変わりはない。自分達で楽しむ術は、それなりに手に入れたつもりだけれど、今はそれだけじゃダメなんじゃないかって気がしている。自分を取り巻く状況、社会を取り巻く状況、どちらにも危機感があり、その2つはつながっている。こっち側で勝手に楽しみに続けることを、許してもらえない状況が迫っているように感じるのだ。

最近、3.11東日本大震災、福島第一原発事故直後の暗がりの中で感じていたことを、またよく思い出すようになった。
「光は闇の中に」
ずっと前から自分が歌い続けてきたフレーズが、あの状況の中でとてもリアルに響いたのを覚えている。不安と絶望的な気分の中で、どうにか希望を探し続けようとした日々が、自分のあらたなスタートラインとなったはずだった。まじめさとばかばかしさのバランスを取りながら、あのときの気持ちを忘れずにいたいと思う。

長野、高岡、名古屋、大阪とHOBO HOUSE BANDの面々とともにツアーしてきて、自分はホント音楽と人に救われているのだなあと実感している。音楽を仕事にすることで、当然しんどい思いをすることもあるのだけれど、瞬間、瞬間を音楽に捧げ続け、皆とエネルギーを交感し合うことで、すべてが報われてゆく感動を幾度となく味合わせてもらっている。この感覚を持ち続けることができれば、これからもいろんな現実を乗り越えてゆけると思う。

7月10日(日)下北沢GARDENのステージでは、HOBO HOUSE BANDのメンバー、スタッフ、お客さん、アルバム制作も含めて関わってくれるすべての人達の思いを受け取ってパフォーマンスするつもりです。その場にいられる幸せを噛み締めながら、皆さんと最高の一期一会を過ごしたいと思います。
お待ちしています。

●7/10(日)下北沢・GARDEN 03-3410-3431
~リクオ・ソロアルバム「Hello!」発売記念スペシャル・ライブ~
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)/橋本歩(チェロ)/阿部美緒(ヴァイオリン)
前売り¥4500 当日¥5000(1DRINK別途) 開場17:30 開演18:00
メール予約フォーマット:http://goo.gl/forms/Q7Y0pSdCYs 
参院選投票の証明書か投票場で撮った写真を提示すれば、前売り扱いで入場できます。

■リクオ・アルバム「Hello!」特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello/




2016年7月1日金曜日

3度目の17歳

先月、15年のお付き合いになる年上の知人Aさんと1年振りに再会して、色々話しさせてもらった中で、Aさんがこんなことを言っていたのが印象に残った。
「僕はもうすぐ60歳になるんだけれど、自分では3度目の20歳を迎えるつもりでいるんですよ」
プライベートで色々あったらしいAさんは、自身の今を3度目の20歳とすることで、人生の再出発を考えているようだった。前向きな発想だと思った。
Aさんの話を自分の年齢に照らし合わせて考えてみたら、51歳の自分が、3度目の17歳を迎えていることに気づいた。何だか腑に落ちたような気分になった。

1度目の17歳は、自意識過剰の半引き蘢り状態で過ごした。
たまに街に出れば、誰かが自分を見てバカにしてるんじゃないかと過敏になった。常に取り残されたような無力感に苛まれていた。特に何をするわけでもなく1人で夜更かしばかりして、学校では寝てばかりいた。
常に身体がだるく、あまりに無気力な状態が続くので、病気じゃないかと心配になって(あくまでも身体の)、自主的に病院に行って人間ドッグを受けてみたら、検査結果を見た担当医から、精神科を紹介すると言われてしまった。想定外の展開に怖くなり、精神科に行くことを拒否して、そそくさと帰宅した。
あのとき、自分のことを病気扱い、特別扱いにしなくてよかったと思う。そもそも、そんな大袈裟な話ではなく、心身のバランスの悪いティーンエージャーにごくありがちな症状だったのだ。
当時はクリエイティブなことは何もしていなかったけれど、この頃の悶々とした「ため」が、後の創作に役立った気がする。

2度目の17歳にあたる34歳は、前回のブログでも振り返った時期だ。デビューから8年間お世話になった事務所を離れてフリーになり、今のようなツアー暮らしを始めたばかりの頃で、余裕がなく毎日が必死だった記憶がある。
ソロ活動と平行してThe Herzとしてのバンド活動も活発化していて、音楽性の幅がぐっと広がった時期でもあった。とにかく、今のままの自分ではだめなんだと自覚して、いろんなことにトライして、もがきながら前に進もうとしていた気がする。2度目の17歳は、現在に繋がるあらたな音楽生活のスタート、再出発の年だった。

そして今、51歳の自分は3度目の17歳を迎えて、またあらたなスタートを切ろうと、自主レーベルを立ち上げたり、ポップなアルバムを作ったりして、元気にもがいてる最中だ。
状況を大きく変えるのはなかなか難しいけれど、積み重ねた実感と、身につけたたくましさ、しなやかさで、17歳の頃よりも、34歳の頃よりもさらに弾けてやろうと思っている。

人は年を重ねるほど若くなってゆくとヘルマン・ヘッセが語っていたけれど、自分に関しては、あたってる気がする。これって、アンチエイジングとはまた別の感覚だ。
1度目とも2度目とも違って、3度目の17歳は格別だ。こうなると長生きして4度目、5度目の17歳も体験してみたくなる。また違った世界が見えてくるはずだ。4度目の17歳の68歳になって、またあらたな景色の中で葛藤したりするのもいいかなと思う。
取りあえず、まだ人生に飽きることはなさそうだ。

さあ、明日からアルバム「Hello!」発売ツアーの集大成、バンドセットによるスペシャル・ライブ3公演(7/2名古屋、7/3大阪、7/10東京での)が始まります。
チケットが売り切れたりしないのが悔しいけど、今からでも間に合いますので、ぜひ3度目の17歳を迎えたリクオの集大成ライブにお立ち会い下さい。

★リクオ・ソロアルバム「Hello!」発売記念スペシャル・ライブ
出演:リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/※真城めぐみメンバー(コーラス)/※橋本歩(チェロ)/※阿部美緒(ヴァイオリン) ※は東京公演のみ参加  
●7/2(土)名古屋・得三(TOKUZO) 開場18:00 開演19:00
●7/3(日)大阪・心斎橋 Music Club JANUS 開場17:00 開演18:00
●7/10(日)下北沢 GARDEN 開場17:30 開演18:00
メール予約フォーマット→ http://goo.gl/forms/Q7Y0pSdCYs
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/
「Hello!」特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello/









2016年6月19日日曜日

実感の積み重ね ー 北海道にてツアー暮らしを振り返る

8日間で北海道6ヶ所を回るツアーから戻ってきたのが月曜日。それからツアーの余韻にひたることなく、日々に負われてもう週末。ライブイベントとプロモーションをかねて訪れた大阪のカフェで一息ついて、このブログを書いている。
北海道ツアー中に、色々感じたり、振り返って考えることが多かったので、忘れないようにまとめておこうと思う。

一言で言えば、充実したツアーだった。やはりアルバム「Hello!」のリリースを受けてのツアーであることが、大きかったのだと思う。お客さんの期待感とこちらの意気込みが、会場の熱量を高め、いつも以上のエネルギー循環を生みだした。
ツアー中、今までずっと自分の作品を聴いてくれていた何人もの人達から、新譜「Hello!」に対する思いを聞かせてもらって、とても勇気づけられた。アルバム各曲に自分自身を重ね合わせて聴いてもらえていることが嬉しかった。
ツアー前は、心身ともに少々疲弊した状態だったのだけれど、北海道入りしてから体調が上向き始めた。北海道の自然にふれ、多くの人達からダイレクトに想いを受け取って、気持ちが前向きになってゆくのを感じた。

ツアー中、少し心の余裕ができたせいで、今から18年前、’98年のツアーで北海道を訪れたときのことを思い返した。今のような年間100本を超えるペースで各地をツアーして回るようになったのは、この年からだ。
デビュー当時からお世話になった事務所を離れたばかりの頃で、スタッフや共演者の帯同なく1人だけで1週間以上の長いツアーを回るのは、このときが初めての体験だった。今回の公演先に含まれていた芦別・ディランと旭川・アーリータイムズとのお付き合いは、この時のツアーから始まった。

そもそも、自分が今のようなツアー暮らしに活動の中心を移行させたのは、必要に迫られてのことだった。メジャーレーベルからリリースし続けたCDが売れず、レコード会社との契約が切れたことで、事務所からの給料がストップし、歩合によるギャラ制に移行するも、それでは食っていけなくなり、どうしようもなくなって事務所を離れたことがきっかけだ。つまりは、食っていくための限られた選択だったのだ。
元々、ライブは好きだったので、ツアー暮らしへの移行は、嫌々というわけではなかったけれど、メジャーデビューしてから約7年で「売れなかった」という事実は、はっきりと挫折だった。18年前の北海道ツアーは、事務所を離れたばかりの不安と売れなかったという挫折を引きづりながらの、自分にとってのリスタートだった。

ツアー中は、いい夜もあれば、寂しい夜もあった。総じて慣れないことが多く、「しんどいツアーやったなあ」という印象が残っている。
ツアーの半ば、初めて訪れた街で1日を過ごし、朝目覚めたら、急に絶望感にさいなまれ、自分でも驚いた。宿泊先を出て、次のツアー先に向かう間も後ろ向きな考えばかりが堂々巡りして、ちっとも前向きになれない。突然、自分のキャラが変わってしまったような感じ。
広くてどんよりした北海道の空を見上げながら、「もう楽になりたいなあ」などと思っている自分を、「こいつ、ちょっとやばいなあ」と割と冷静に心配してるもう1人の自分がいた。こういう鬱的状態に陥るのは初めての体験で、自分がそういう心持ちになることが意外だった。フリーになってから、心身の疲れがたまっていることにも気づかないくらい、ずっと気が張りつめていて、その反動が一気に襲ってきたのだと思う。
けれど、鬱的状態に浸る余裕もなくツアーは続いた。幸い、1人にならなければ、強い落ち込みがやってくることはなかった。その後のツアーも盛り上がったり、落ち込んだり、起伏の激しい毎日が続いた。
始めての土地、初対面の人達、1人だけのツアー、ファンではないお客さんの前でのステージ。そんな中で、自分はさまざまを学んでいった。というか、学ぶしかなかった。
しんどいツアーではあったけれど、当時の体験がその後の自分に及ぼした影響は大きかった。そういった意味で、北海道は、自分のツアー暮らしの原点ともいえる場所だ。

ツアーを重ねるうちに、ライブに対する自分の意識が少しずつ変化していった。独り善がりになってはいけない。力まず視野を広く持つ。ライブの醍醐味はエネルギー循環による化学反応であり、毎回のステージが一期一会。その瞬間にすべてをかける。そのような意識が強まっていった。
それまでは、自分のことを知ってもらいたい、わかってもらいたいという自我が強すぎたのだと気づいた。それよりも、集まってくれた人達と一緒に最高の解放空間をコーディネイトしてゆくことの方が大切で、そこにこそライブの醍醐味を感じるようになった。そういった姿勢の変化によって、毎回のライブがより新鮮に感じられるようになった。
ツアー暮らしに慣れてくると、ツアーが楽しくなってきた。人と出会って、いろんな話を聞かせてもらうことが面白く感じるようになった。各土地の風土の違い、気質の違い、価値観の違い、時間の流れの違いが興味深く感じられ、それらを自然に受け入れられるようになってきた。
人も土地も多様であると実感するようになった。ツアーを重ねることで、五感のバランスが整い、心の風通しが良くなり、自分の中のワイルドネスが解放されてゆく気がした。よく弾き、よく歌い、よく飲み、よく語り、ときに羽目を外し、アホをやらかす日々が続いた。かつでのナイーブな青年キャラはどこかに行ってしまったようだった。

ツアー暮らしは実感の積み重ねだった。その積み重ねが数字に負けそうな自分を救ってくれた。ダイレクトな反応が、自分に自信と確信を与えてくれた。そういった感覚は、今も変わらないなあと、北海道の地でつくづく思った。

自分は気力が続く限りは、今のようなツアー暮らしを続けられたらと思う。ただ、その一方で、今のツアー暮らしに埋没してはいけないとも思う。いい曲を書いて、いい作品をつくり続けたいし、そのことで目に見えない誰かからも評価されたい。本当は、規模の大きいホールでのツアーもやりたい。そのためには数字に向き合う時間もつくろうと思う。今は、そういう時期なんだと思う。
音楽で食ってゆくこと事態が、増々難しくなりつつある世の中だから、いくつになってもトライし続けなければ、現状維持も難しいだろうと自覚している。
広い視野で何事も楽しむ余裕と、色んな人達に支えてもらっている感謝の気持ちを忘れずに、まだまだ元気にもがいてやろうと思う。

ツアーもいよいよバンド編成による5公演を残すのみ。皆さん、お待ちしてますよ。
ー 2016年 6月19日

★〜リクオ・ソロアルバム「Hello!」発売記念ツアー〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND(ドラム:椎野恭一/ベース:寺岡信芳ペダルスティール:宮下広輔)
●6/25(土)長野・ネオンホール 026-237-2719
●6/26(日)富山県高岡市・カフェ・ポローニア 0766-63-3283

★〜リクオ・ソロアルバム「Hello!」発売記念スペシャル・ライブ〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/※真城めぐみ(コーラス)/※橋本歩(チェロ)/※阿部美緒(ヴァイオリン) ※東京公演のみ
●7/2(土)名古屋・得三(TOKUZO) 052-733-3709
●7/3(日)大阪・心斎橋JANUS 06-6214-7255
●7/10(日)下北沢・GARDEN 03-3410-3431

■ツアー詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/
■「Hello!」特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello/
■「僕らのパレード」MV https://youtu.be/Rl5h__LNwRU
■「大阪ビタースイート」MV https://youtu.be/A6-57XGuLoQ