2005年1月24日月曜日

1/24 (月) ヤンシータイム

録音6日目。
 今日のメインはヤンシーとピアノ.デュオで一発録りする2曲。
 あんまり時間がないのだが、なかなかヤンシーがスタジオに現れない。仕方なくエンジニアの大和田君と二人で別の作業を進める。
  オレのスタジオ入りから1時間半程後に、スタジオに現れたヤンシーは、焦る様子もなく実にマイペースでにこにこしている。自分は時間のことが気になって、 少しいらついていたのだが、彼のフィーリングに触れると、気持ちもほぐれてきて、「まあ、ええか」って気分になった。ヤンシーが持っている心地よい時間の 流れ、いい空気感(オレはそれを「ヤンシータイム」とか「ヤンシースマイル」と呼んでいる)に、自分もチャンネルを合わせるようにする。
 向かい合わせにセットされた2台のスタインウェイ.ピアノで、音を交わしながら簡単な構成確認をすまして、さっそく録音を始める。

  この曲はクレフィンのレコーディングが始まる前日に急に、ヤンシーがオレと二人で演ってみたいと言い出したカヴァー曲で、今日に至るまで一度も二人で合わ せたことがなかった。どんなアレンジで演奏しているのかも、前日に音源とコード譜面を渡されるまで、知らなかった。レコーディング用のリハーサルでは、別 の曲をヤンシーは用意していたのだ。
 昨日のレコーディングの後、夜中に部屋に戻って、その音源を聴きながら、いちよう予習をしておいた。コード を追ってゆくと、ヤンシーがオレに渡したコード譜はでたらめだったことが判明。レコーディング用に譜面を書き直しながら「なんか真面目にやってんなあオ レ。」としみじみする。大体自分は基本的には自分本意でマイペースな人間なんだが......。まあ、そんな経緯がありつつレコーディング当日を迎えたわ けである。

 二人での同時録音は互いの音が録音マイクに被るので、後で部分的に録り直したり、編集することができない。やり直しのきかない1発勝負である。今日は、そんな状況の中でマジックを体験した。
 録音直前になっても、ヤンシーからは緊張や気負いは感じられない。ぐっと気合いを入れるのではなく、すっと入ってゆく感じ。
 ヤンシーが優しく柔らかいタッチで、ゆっくりと8部音符を刻みはじめる。体が緩やかに横揺れしている。
  オレはしばらく彼のイントロのピアノを聴き続け、そのフィーリングを受け取ったところで、繊細なタッチで自分のピアノを重ねる。集中力が高まるにつれて、 心が澄んでゆき、どんどんインスピレーションがわいてくる。ヤンシーのピアノと歌が心と体にしみこんで、重なり合い溶け合ってゆく。弾いているというより は、弾かされている、弾かせてもらっているという感じ。向かいのヤンシーは、終始柔らかい笑顔。緊張の先の心地よい共鳴感。
 完璧ではないが、2度とできないプレイができた。
 この曲は洋楽のカヴァーで、日本語で意訳されていることもあり権利関係の許可が降りない可能性が高い。つまりアルバムに収録されず、幻のテイクに終わる可能性が高いのだ。まあ、もし収録できなくとも、こういう体験ができたことに感謝して、よしとしたい。
 2曲目の録音は、ヤンシーのオリジナル曲。
  最初少し煮詰まる。ピアノを別録りしてみたのだが、今一つ。そうしたらヤンシーが、曲のコードを全部変えると言い始める。「今更、マジ?」と思ったけれ ど、変えたコードで合わせてみると、確かにこちらの方がよい。曲調はすっかり変わってしまったが、これでいいのだ。再び、新コード、新アレンジで同時録 音。こちらもセッション要素の強い1発勝負。生き生きとした旬のテイクが録れた。
 今日のレコーディングで起きたマジックは、ヤンシータイムなしにはありえなかった。勉強なったわ、ヤンシー。

 今日で高木クラヴィアでの録音は終了。レコーディングも少しお休み。実に濃密な6日間だった。
 レコーディングが終わった後、渋谷でずっとレコーディングに立ち会ってくれているインフィニィティーレコードの社長、氏家さんと飲む。で、やっぱりもう一軒、1杯だけと誘われて、さらに結構飲んで帰る。それもよし。
★ヤンシー恒例菓子パンタイム。本日は高級レストラン風デニュシュ食パン。
★高木クラヴィアではレコーディングの合間に何度も調律してもらってます。ピアノの音は最高。
 

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