2010年7月30日金曜日

白石で受け取った情熱と縁歌

白石ホワイトキューブ音楽祭2010 ”キューブで夏フェス”
【開催場所】宮城県白石市 ホワイトキューブ (白石市文化体育活動センター) 
出演: リクオ(Vo・ピアノ) with 橋本歩(チェロ)阿部美緒(ヴァイオリン)/坂本サトル(Vo・g)/山口 洋  (Vo・g)/神野美伽(Vo)  ゲスト アントニオ古賀(g&Vo)
佐藤幸江(民謡) こおり健太(Vo)
 人口3万人台の街に、これだけの人を集める事がどれほど大変なことか、そして人を集めるだけでなく、こういう素晴らしい空間を作るためにどれだけの積み重ねが必要か、このイベントに関わった地元の人達には、心からの感謝と尊敬の気持ちで一杯だ。
 こんなに包み込まれるような暖かくて長い拍手を客席から受けたら、どんなミュージシャンだって感激するにきまってる。
 こういう幅広い客層、老若男女が集まって楽しめるイベントは、都市部では難しいと思う。演歌歌手の神野美伽さんやアントニオ古賀先生とのジャンル、世代を越えた共演も、白石だからこそ実現できたのだと思う。
 このイベントを通じて、中央ではない、辺境の地、地方だからこそ発信できることがあるんだということをあたらめて実感した。イベントのオーガナイザー的 存在であるカフェミルトン夫妻の姿をみていて、人を動かし、何かを実現させるために必要なのは、やっぱり何よりも情熱なのだと思った。
 自分が「UMISAKURA MUSIC FESTIVAL」に深く関わるようになったきっかけもやはり、「海さくら」主催者の古澤君の真っすぐで嘘のない情熱に胸を打たれたからだと思う。
 そういう人達に自分は勇気づけられ、支えられていることを忘れずにいたい。受け取ったエネルギーは、独り占めせずに、色んな人達と循環しあってゆこうと思う。
 
 歩ちゃんと阿部美緒を白石に連れて来れたのも嬉しかった。彼女達と山口洋との共演は実に新鮮だった。神野さんとサトル君のデュエットもよかったなあ。
 
 それにしてもアントニオ古賀先生は、実にチャーミングな方だった。御年69歳。バリバリの現役で、哀愁と情熱が同居した素晴らしいギターを聴かせても らった。音楽性だけでなく、人柄もラテン気質で、実にオープンな方だった。打ち上げの席では、貴重な話を色々と聞かせてもらい感激した。
 古賀先生の語録を一つ。
 「自分が演奏しているのは演歌ではなく、人をつなげる縁歌です」

2010年7月25日日曜日

夏の盛りに、どこか涼しげ

静岡県富士宮市 roots&fruits
 富士宮に来るのは3回目なのだけれど、過去2回は天候に恵まれず、富士山を拝めずにいた。天気の良い日には、自分が暮らす湘南からも、美しい富士山を拝めるのだけれど、もっと間近で、でっかい富士山を見上げてみたかったのだ。
 浜松を出た時は晴天だったから今回こそはと期待したのだけれど、富士駅で乗り換えるあたりから雲行きが怪しくなり始め、その後晴れ間が消えて、すっかり曇り空に。結局今回も富士山は姿をあらわさなかった。残念。
 
 この日も気負いなく、響きを味わいながら演奏。この3日間、俯瞰する自分の存在を、いつもより大きく感じた。夏の盛りに、どこか涼しげな自分がいる。 

 ライブの後、カウンター席に座って、マスターの岩崎君がグラスを洗ったり、氷を削ったりするのをながめていた。美しい手際だった。プロやなあ。

2010年7月24日土曜日

パラダイスはここにある

浜松市 Esquerita68
オープニングアクト:安倍タカノリ
 浜松でソロライブをやるのは多分7年振りくらい。
 浜松に行かなくなった理由は、お客さんが入らないからだ。

 Esquerita68は趣味のよい洒落たカフェだった。初めて訪れたお店だけれど、居心地がよかった。近所にあれば、きっと通うと思う。マスターの後藤君とは旧知で、多分7年振りの再会。お互い元気で何より。
 この日のオープニングで演奏してくれた安倍タカノリ君は、前日の静岡でオープニング演奏してくれたアベブラザーズの一人。静岡磐田市出身で、2年前から東京阿佐ヶ谷に住んでいるそう。
 安倍君の歌は心地よく沁みた。気負いや嘘のない、暮らしの中から生まれた歌だと思った。音楽と共に暮らす歓び、歌う歓びが、演奏や表情から溢れて出ていた。
 いいバイブを受け取った後に、気持ちよく演奏させてもらった。パラダイスはここにあると実感できた。
 とはいえ、もう少しお客さんが来てくれると、また浜松に戻って来やすいのだけれど。

2010年7月23日金曜日

歌ことが増々楽しい

静岡市 UHU
オープニングアクト:アベブラザーズ/yosu
 夏本番。日本各地で猛暑。静岡もうだるような暑さ。

 お客さんはライブの最初から出来上がってる感じだった。これだけ盛り上がってくれると、こちらは力が抜けて楽に演奏できる。集中を維持して、いい流れのライブができた。
 風邪も治って声がよく出た。
 ここ数年の自分はシンガーとして成長期にあると思う。年々、声がよく響くようになってきている。発声のコツがつかめてきた気がする。遠心力と息で歌うイメージ。
 最近、歌うことが増々楽しい。イメージに少しずつ近づいている実感がある。
 ユーミンの「やさしさに包まれたなら」をカヴァーしたことは、自分にとって大きかった。シンガーとしての課題曲をもらったような感じ。とても歌い甲斐がある。新しい自分を引き出してもらっている感じ。
 清志郎さんとの共作「胸が痛いよ」を再び歌うようになったことも大きい。前とは違った表現方法で、自分のエモーショナルな部分が蘇ってきた気がする。
 先日、小坂忠さんの歌をまじかで聴いたら、歌うことへの欲が増々高まった。すごく刺激を受けた。自分ももっといい歌が歌えるはずだと思った。

 この日のオープニングで歌ってくれたアベブラザーズが、とても印象に残った。ユーモアを忘れずに、ホントのことを歌う姿勢に共感した。

2010年7月18日日曜日

どんとの息子、ラキタ

「遊行寺夏の音祭り どんとこい Vol.11」
【場所】藤沢市 時宗総本山 遊行寺
【出演】小島さちほ/岡地曙裕/パスカルズ/リクオ/montelima/ラキタ/吾妻光吉/マイア.バルー/他
 10年前にハワイで急逝したどんとの追悼イベントに参加。どんと一家は沖縄に引っ越す前は藤沢湘南で暮らしていたのだ。
 イベント会場の遊行寺は、踊り念仏を始めた一遍上人を宗祖と仰ぐ、時宗の総本山。
 会場で奥さんのさちほさんと久し振りに再会。さちほさんと話して、どんと一家が住んでいた場所と自分が今住んでいる場所がとても近いことが判明。
 この日、素晴らしい逸材、ダイヤモンドの原石に出会った。どんとの息子、ラキタ君だ。まだ20歳。彼が1曲目に披露したオリジナル曲は、恐らく父親であ るどんとのことを歌っているのだろう。いきなり心を揺さぶられた。表現も佇まいも涼しげで、透明感があった。この世にいながらあの世に通じているような感 覚は、どんとと共通している。
 どこか宗教人のような佇まいがあって、お寺本堂でのライブというシチュエーションが、すごくはまっていた。
 彼の歌をまた聴きたいと思った。これからたくさんの人達が彼の歌に揺さぶられることになるだろう。

2010年7月17日土曜日

海さくらセッション

UMISAKURA MUSIC FESTIVAL 2010 プレLIVE~セツナグルーヴ2010~
場所:神奈川県藤沢市片瀬海岸 虎丸座 
【出演アーティスト】
☆リクオ【ゲスト】小坂忠/山口洋(HEATWAVE)
【サポート】寺岡信芳(ベース)/朝倉真司(パーカッション)
 この2ヶ月間、色んな人達と合奏を繰り返した。自分のレパートリーではない曲をたくさん演奏した。どのセッションも大体自分の仕切りで行われた。随分と時間を費やしたなあと思う。
 最近、近い人から「なんでそんなにライブでセッションとかコラボばっかりやってるのか?完成されたソロステージをやっていればいいんじゃないか?」というようなことを言われた。そう言われて、自分でもなぜなんだろうと考えてみた。
 理由は一つじゃないけれど、あの一期一会の感覚、緊張感が好きなんだと思う。セッションは決めごとが少ない分、展開が読めないスリリングさがある。相手の音にすぐに反応しなきゃいけないから、いつも以上に耳が敏感になる。
 この緊張感がいい出会いを生むのだ。その出会いは他者との出会いだけでなく、新しい自分自身との出会いも含んでいる。最高のセッションは、自分の限界とあらたな可能性の両方を実感させてくれる。
 この日が、まさにそんな感じだった。忠さん、ヒロシ、寺さん、朝ちゃんとのセッションで、普段は使わない力を引き出してもらったような気がする。
 この日の本番は、リハーサルとは随分違う演奏、アレンジになった。出演者の皆が、ステージ上で多いにインスパイアされ、互いに触発し合った。とにかく自分のイメージを形にしながら皆と共鳴し合うことに集中し続けた。
 このようなシチュエーションでは、その演奏や立ち居振る舞いから、それぞれの演者の人となりが如実に表れる。取り繕うとしても音は嘘をつかない。自分が試される場なのだ。
 とにかく全身全霊で一期一会を味わった夜だった。
 忠さんの歌には震えた。ヒロシの演奏はこれ以上ないくらいにエモーショナルだった。寺さんと朝ちゃんは、緊張と解放のものすごい振り幅の中で、貴重な体験をしてくれたようだ。
 9/11(土)に開催される「UMISAKURA MUSIC FESTIVAL 2010 」では、このようなセッションがさまざまな組み合わせて行われる予定です。出会いの瞬間に皆さんもぜひ立ち会って下さい。
http://www.umisakura.com/fes2010/

2010年7月4日日曜日

5日連続ライブツアー最終日、姫路maja。

兵庫県姫路市 maja(マハ)
★maja+WALK-ON presents 「べっぴんさん、いらっしゃ~い!!リクオライブ ちょっと道草ー姫路編+@wayレコ発記念ライブ?下克上!手柄をたてて錦をかざる!」
オープニングアクト:@way(アウェイ)
 
 5日連続ライブツアーの最終日。さすがに5日連続は無茶だったかなと思っていたのだけれど、いいエネルギー循環ができているせいか意外に元気。
 この日のライブは、加東市のイベント集団WALK-ON とライブ会場のmajaによる共同主催。majaを訪れるのはこの日が始めて。こだわりと美意識の行き届いたとても趣のある空間だった。
 majaのマスター、河村君はお店以外にもレーベル経営やアーティストのマネージメントも手かげているそう。自分が藤沢で通うバーの閉店時によくかかる ママミルクのアルバムも彼のレーベルからのリリースだということが判明。話してみると、いろんな繋がりが。楽屋に週刊プロレスが束になって置いてあるのを 見つけて、さらに河村君への親近感が増す。
 WALK-ON のボス、森本さんとの付き合いは、自分が大学1回生の頃からだから、もう25年を超える。自分が生まれて始めてギャラをもらったライブを企画してくれたのが、森本さんだったのだ。
 WALK-ON の面白いところの一つは、スタッフの年齢層が実に幅広いところ。森本さんが今年50歳で、一番下のスタッフはまだ20歳そこそこ。やはりジェネレーション ギャプは存在するようで、スタッフ同士の喧嘩は日常茶飯事なのだとか。でも、摩擦を繰り返しながら一緒に前に進んでゆける関係って、いいと思うのだ。
 オープングで演奏してくれた姫路出身のアコースティックデュオ、@wayの二人は今年二十歳になったばかり。彼らの演奏を聴くのは昨年の4月以来だったのだけれど、とにかくその成長振りに驚かされた。若者の成長はほんま早いなあ。
 前日の大阪とはまた違う雰囲気、乗りのライブ。じっくり語って、じっくり演奏した。
 ツアー最終日をいい形で締めさせてもらえた。
 またいい出会いをもらえて感謝。

2010年7月3日土曜日

「見放題」大盛況!

「見放題2010」
【公演会場】umeda Akaso 他 大阪東梅田、扇町界隈の合計7会場
 「見放題」は、東梅田、扇町会話7ヶ所のライブ会場で同時進行する、出入り自由のライブサーキット形式フェス。こういう草の根のネットワークを頼りにした手作りのライブイベントが、地元の若い人達を中心に行われるのは、素晴らしいことだと思う。
 自分は開催初年度の08年から参加させてもらっているのだけれど、年々動員と盛り上がりが増してきていて、今年は雨天にも関わらず、千人を超える人が集まったそうだ。
 出番前にライブ会場を色々と回ってみたのだけれど、予想以上に幅広い客層。出演者の平均年齢は20代と思われるけれど、お客さんは若者ばかりでもなく、 40代と思われる人も見られた。自分が若い頃に比べると、ライブ文化の裾野がずっと広がって、定着してきているのだと思う。
 自分のソロでの出番前にまず、RAIN DOGSでの広沢タダシ君のセッションに参加。パーカスは東京60WATTSの森君。会場はフェスならではの開放感に満ちていた。いいセッションだった。
 自分のソロでの出演会場はムジカジャポニカのトリ。とにかくこれ以上ないくらいの盛り上がり。「見放題」では、自分のパフォーマンスも普段以上にエネルギッシュでワイルドになる。
 RAIN DOGSでの打ち上げは、例年通り出演者が入り交じってのセッション大会で多いに盛り上がる。久し振りにカオリーニョ藤原とサムクックナンバーをセッション。矢野絢子ちゃんとは小坂忠さんの「機関車」をデュエット。
 疲れ知らずで延々と盛り上がり続ける若者達を後にして、めずらしく先に打ち上げ会場を後にする。それでも午前3時。

2010年7月2日金曜日

変化の途中ーあれから21年

広島市 オーティス
 有山じゅんじさんのツアーに同行させてもらって、オーティスを始めて訪れたのが今から約21年前。その時のツアーが自分にとっては、始めての本格的なツアー体験だった。
 その後オーティスには何十回もツアーで訪れていて、マスターのサエキさんには、ずっと見守ってもらっているような感覚がある。その視線は愛に満ちているけれど、同時に、そのピュアさ故に、妥協のない厳しさも含んでいる。
 だから、オーティスでのライブは安心感と同時に普段とは違う緊張感が同居する。自分がどんな風に変化してきたのか?成長しているのか?前に進んでいるのか?そういうことを実感できる、試される空間なのだ。
 この日のライブを終えて、自分は今も変化の途中にあり、それを成長と呼んでもいいのではないかと感じることができた。
 また戻って来ます。


2010年7月1日木曜日

築180年、奈良町蔵武D

奈良市 蔵武D
 前日に下北沢で、長くて濃い夜を過ごした割には、朝の寝起きは良かった。疲れを感じることもなく、前夜の余韻、高揚を残したまま奈良へ向かう。
 この日のライブ会場蔵武Dは、元々は米蔵だった場所で、なんと築180年なのだそう。こういう古い蔵が残っていて、再利用されるところが奈良らしい。
 蔵武Dのある奈良町は、江戸、明治初期の町家の建物が今も残る風情豊かな旧市街地。せっかくなので、リハーサルを早めに切り上げて、しばらく街をぶらつ く。めずらしく何人ものお客さんに声をかけられる。ライブだけでなく観光を兼ねて訪れた人が多かったのだろう。
 蔵武Dでライブをさせてもらうきっかけは、奈良在住で共同通信社で働くM君からの紹介だった。この日のライブでは、オープニングアクトとして、Mくん が、エレーナ.ロヒーニンというステージ名でピアノ弾き語りを聴かせてくれる。Mくんの繊細さ、美意識が伝わるリリカルな楽曲と演奏だった。
 奈良にはやはり、自分の故郷である京都に近い趣を感じる。蔵武Dは、始めて来た店という感じがしなくて、お店の雰囲気にも、お店の人達にも、すっかり馴染んでしまった。懐かしくて居心地の良い空間だった。そのせいか少々飲み過ぎてしまった。