2017年8月31日木曜日

やんちゃなガキ ー 日野皓正ビンタ事件で感じたこと

ジャズトランペット奏者の日野皓正(てるまさ)氏が今月20日、東京都世田谷区で開かれたコンサートで、壇上でドラムを演奏していた男子中学生の髪をつかみ、顔に往復ビンタを加えたとういうニュースが、ネットで話題になっている。
http://news.livedoor.com/article/detail/13543541/

記事によると、コンサートは中学生向けの体験学習事業の一環で、日野氏の指導を受けて約4カ月間練習してきた生徒約40人が成果を発表する場で、ドラムを担当した生徒のソロパートの演奏が長くなりすぎたことで、日野氏が止めようとした中で手が出たとのこと。
その様子は動画にも上がっていて、自分も以下のYouTubeで確認した。
https://www.youtube.com/watch?v=j6AHt2Kd5fw

ビンタの是非はおいといて、この少年というか、このガキはヤンチャそうでオモロイなあと思ってしまった。
だって、ステイックを取られ、髪を掴まれても、怯まずに素手でドラムを叩き続け、ビンタされても、天下の日野皓正を睨みつけるって、なかなかできひんこととちゃうかなあ。今は方向性が間違っていても、あれだけの過剰なエネルギーあったら、使いようによって、素晴らしい才能を発揮するんじゃないか。こういう自我を持て余して、逸脱してしまう、独り善がりなガキにこそ、音楽による対話と共鳴から生まれる化学反応の醍醐味を知ってほしい。

なめきった勘違いのガキって、ネットの中にはいくらでも存在するのだろうけれど、実際、人前で面と向かって、つるむことなく1人で、あそこまでヤンチャに振る舞えるって、今の時代では貴重なんじゃないか。ネットの中で万能感に浸り続けるガキに比べたら、ずっと頼もしく感じる。

そもそも、音楽には守るべきルールがあるのと同時に、そこから逸脱してしまう過剰さも必要だと思う。そういった逸脱や過剰が生み出す緊張感やカオス、野性味こそがロックやジャズの1つの肝だと自分は認識している。素晴らしい音楽は、逸脱を繰り返しながらも、最終的には誰も置いてけぼりにしない。共鳴を忘れない。
ただ、そこにたどり着くまでには、持て余す自意識や混沌を開放させてゆく長いプロセスが必要なんだと思う。少年には、小さな枠の中でかしこまることなく育ってほしいと願う。で、伸びた鼻は何回でも折られたらええやん。最高のドラマーになってほしいなあ。

日野皓正さんは、腹立ったんやろな。オレも現場であの立場やったら、イラっとしたと思う。ビンタはしないけど。
日野さんは少年にビンタした後、どんな気持ちになったんだろう。自分の胸も傷んだんじゃないかなあ。そして、こんなに大きな話題になるなんて、想像もしていなかっただろう。
あの往復ビンタは、ただ感情にまかせたものではないと思う。アントニオ猪木の闘魂注入ビンタに比べても、ソフトタッチに見えたから。