2017年9月22日金曜日

山下達郎さんの「ライブ中に歌う客は迷惑」発言で考えたこと

山下達郎さんの発言が話題を呼んでいる。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170921-00759556-jspa-life
自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組『山下達郎のサンデー・ソングブック』の中で、ライブに行くと抑えきれずどうしても大声で歌ってしまうリスナーからの「これってダメですか?」との質問に、達郎さんは「ダメです。一番迷惑。あなたの歌を聞きに来ているわけではないので」と返答。この発言に対する議論がネット上で大いに盛り上がり、ヤフーやライブドア等いくつものネットニュースで取り上げられることになった。自分の知る範囲では、達郎さんの意見への賛同が大半のようだ。

達郎さんの気持ちは同業者として自分なりに理解できる。自分の体験を語らせてもらうと、席数が60席に満たない会場でのピアノ弾き語りライブの時に、客席最前列で、曲の最初から最後までずっと自分と一緒に歌い続けているお客さんがいて、その時は正直、やりづらくて困ってしまった。またその声がよく響くのだ。
しかも、そのお客さんは、こちらのテンポにあまり寄り添うことなく自分のテンポで歌い続け、常に演奏よりも先走って歌ってしまうから、こちらの演奏がそのお客さんの声にひきづられそうになってしまう。周りのお客さんも明らかに戸惑っているので、放置しておくわけにもいかなくなってしまった。
でも、自分の曲を空で歌えるくらいファンでいてくれて、回りが見えなくなる程楽しんでくれているのだから、とてもありがたいことでもあるのだ。時間を割いて、お金を払って観に来てくれるお客さんに対して、強い態度で接する気持ちにはなれなかった。場の空気も悪くなるので、MCでお客さんに直接注意すことはなるべく避けたいと思った。

そこで自分のとった行動は、こちらの演奏を変えることだった。
まず、マイクスタンドを口元から離し、会場に生声を響かせた。そして、ピアノタッチを最弱のピアニシモにして音数を極端に減らして演奏した。そうすると、自分と一緒に歌っていたお客さんの歌声もより会場に響き渡ることになった。そこに至ってようやく、そのお客さんも自分がその場に与えていた影響に気づいて、歌うことをやめてくれた。

ライブは、その場にいる皆とのエネルギー循環による化学反応、一期一会のプロセスを共有してゆくドキュメンタリー。
自分はそうとらえているので、その一連の流れこそが、その日のライブの最大の見せ場の一つとなったと思っている。
ただ、そのお客さんには少し恥ずかしい思いをさせてしまったかもしれない。次回もまたライブに来てもらえたらと思う。

では、自分のライブでお客さんの合唱はNGかと言うと、全くそんなことはない。むしろ、それを求めていると言っていい。
自分のライブでは、こちらがお客さんに対して合唱や手拍子を促す場面がとても多い。特に、ソロのピアノ弾き語りライブでは、歌い手、打楽器奏者としてのお客さんの立場がより重要な位置を占めている。
そういう場面では、自分の立場は指揮者なのだと思う。ただ、完全な統率は目指さない。リズムと音程がずれていても大丈夫。多少はみ出す奴がいてもいい。カオスを残しつつ、皆が高揚感を共有できれば、それが正解だ。
ただ、しっとりと歌うバラードで一緒に歌われたり手拍子されると、それは違います、そこは聴き所ですよと。その辺は臨機応変に対応してもらって、皆でライブをつくっていきましょう、ということなのだ。

ライブにはさまざまな場面が存在する。その場面によっても正解は変化する。だから面白いし、飽きない。
そこに多少のハプニングを含んだライブが好きだ。自分のライブでは、お客さんも、完璧なものよりも、そういったハプニング的要素を期待しているように感じる。アーティストによって、ライブによって、期待されるものも違ってくる。当たり前のことだ。

多分、達郎さんのライブに比べて自分のライブは、ステージと客席、パフォーマーとオーディエンスの間の仕切りが曖昧なのだと思う。自分がそういう方向に向かったのは、体験と置かれた立場によるところが多い。そういった体験について語る良い機会かもしれないと思いつつ、長くなりそうなので、それはまた次回に。

達郎さんの言葉は、一部を切り取られることで極端な解釈がひろがってしまったように感じる。
ライブのあり方の正解は一つではない。やり方は人それぞれだし、与えられた場所やその時の気持ちによっても変化する。千のライブがあれば、千の正解があると自分は考えている。達郎さんだって、きっと、そう考えているんじゃないかと想像する。
正解を決めつけずに、集まってくれた皆と一緒にその日の正解を導き出し、最高のグルーヴに至るステージができたらと思う。
ー 2O17年9月22日(金)

2017年9月3日日曜日

リクオからのご報告 ー 京都に引っ越すことになりました


皆さんに報告があります。来月10月に、生まれ故郷の京都市に引っ越すことになりました。33年ぶりの京都暮らしです。
大阪の大学入学を機に京都を離れ大阪吹田市で11年間を過ごし、その後、東京で12年間暮らした後、’08年4月に神奈川県藤沢市鵠沼海岸に居を移し、約9年半を過ごしました。藤沢に越してきたのは、’06年から’12年の間、江ノ島で開催されていた「海さくらミュージックフェスティバル」というイベントに関わりだしたことがきっかけでした。




江ノ島の海をクリーンにして、次世代に残してゆこうという趣旨で今も活動を続ける「海さくら」という団体が、毎年9月に開催していた野外フェスに、自分は、出演者としてだけでなく出演者のブッキングやイベントの構成、プロモーションにまで関わるスタッフとして参加していました。その打ち合わせなどで何度も湘南に通う内に、自然が近くてオープンな街の雰囲気に魅了され、思い切って、東京からの引っ越しを決めました。この選択は大正解でした。

藤沢に越してから、自分の生活スタイルも変化しました。ツアーから戻ると、陽が暮れる前に、鵠沼海岸から片瀬江ノ島に続く海沿いを散歩するのが、この9年間の日課となりました。海沿いのお気に入りスポットから、夕暮に包まれたシルエットを眺める時間が、自分の心を最も穏やかにさせてくれる瞬間でした。





越してきた当時は、東京に住んでいた頃のように夜の街に繰り出す機会は減るだろうと思っていたのですが、その予想は外れました。最寄駅から2駅の藤沢駅周辺が、東京暮らしの時の下北沢のような存在になり、東京で暮らしていた時以上に、馴染みのお店が増えました。ただ、そこにも東京との違いはありました。
夜の街で出会ったり、一緒に飲む主な相手が、ミュージシャンや業界界隈の人ではなくなりました。音楽と酒好きを共通項に、業界以外の人たちと出会う機会が増えて、その生活の一端にふれ、一緒に楽しい時間を過ごすことができたことが、自分にとってはとてもよかった。出会った地元の人達には、とてもよくしてもらい感謝してます。

この街の暮らしの中で、人と自然にふれることで、心の風通しが良くなりました。ホント、いい思い出しかないです。正直、この暮らしがもっと長く続くのだと思っていました。
この街と、この街で出会った人達との縁がこれからも続いてゆくことを願ってます。皆が拍子抜けするくらい、ライブやなんやらで湘南に戻ってくる機会が多くなるかもしれません。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いします。

京都に居を移すことで、自分の音楽活動の基本スタンスを変えるつもりはありません。今まで同様、曲を書き続け、作品をリリースして、ツアー暮らしを続け、届くべき人に自分の音楽が届くよう 、ますます意欲的に活動してゆくつもりです。
せっかく京都で暮らし始めるのだから、藤沢で暮らしていた時と同様に、地元の人たちとの交流を深め、京都発信、関西発信の音楽活動にも積極的に取り組んでいけたらと思っています。今は、藤沢を離れる寂しさと、京都暮らしへの期待が同居してる感じです。
与えられた条件、残された時間の中で精一杯やってみよう、関わってくれる人達やお客さんと夢を重ね合わせて、一つ一つ現実にしてゆこう。そんな思いをさらに強くしています。
これからもよろしくお願いします。
ー 2017年9月3日(日)

2017年8月31日木曜日

やんちゃなガキ ー 日野皓正ビンタ事件で感じたこと

ジャズトランペット奏者の日野皓正(てるまさ)氏が今月20日、東京都世田谷区で開かれたコンサートで、壇上でドラムを演奏していた男子中学生の髪をつかみ、顔に往復ビンタを加えたとういうニュースが、ネットで話題になっている。
http://news.livedoor.com/article/detail/13543541/

記事によると、コンサートは中学生向けの体験学習事業の一環で、日野氏の指導を受けて約4カ月間練習してきた生徒約40人が成果を発表する場で、ドラムを担当した生徒のソロパートの演奏が長くなりすぎたことで、日野氏が止めようとした中で手が出たとのこと。
その様子は動画にも上がっていて、自分も以下のYouTubeで確認した。
https://www.youtube.com/watch?v=j6AHt2Kd5fw

ビンタの是非はおいといて、この少年というか、このガキはヤンチャそうでオモロイなあと思ってしまった。
だって、ステイックを取られ、髪を掴まれても、怯まずに素手でドラムを叩き続け、ビンタされても、天下の日野皓正を睨みつけるって、なかなかできひんこととちゃうかなあ。今は方向性が間違っていても、あれだけの過剰なエネルギーあったら、使いようによって、素晴らしい才能を発揮するんじゃないか。こういう自我を持て余して、逸脱してしまう、独り善がりなガキにこそ、音楽による対話と共鳴から生まれる化学反応の醍醐味を知ってほしい。

なめきった勘違いのガキって、ネットの中にはいくらでも存在するのだろうけれど、実際、人前で面と向かって、つるむことなく1人で、あそこまでヤンチャに振る舞えるって、今の時代では貴重なんじゃないか。ネットの中で万能感に浸り続けるガキに比べたら、ずっと頼もしく感じる。

そもそも、音楽には守るべきルールがあるのと同時に、そこから逸脱してしまう過剰さも必要だと思う。そういった逸脱や過剰が生み出す緊張感やカオス、野性味こそがロックやジャズの1つの肝だと自分は認識している。素晴らしい音楽は、逸脱を繰り返しながらも、最終的には誰も置いてけぼりにしない。共鳴を忘れない。
ただ、そこにたどり着くまでには、持て余す自意識や混沌を開放させてゆく長いプロセスが必要なんだと思う。少年には、小さな枠の中でかしこまることなく育ってほしいと願う。で、伸びた鼻は何回でも折られたらええやん。最高のドラマーになってほしいなあ。

日野皓正さんは、腹立ったんやろな。オレも現場であの立場やったら、イラっとしたと思う。ビンタはしないけど。
日野さんは少年にビンタした後、どんな気持ちになったんだろう。自分の胸も傷んだんじゃないかなあ。そして、こんなに大きな話題になるなんて、想像もしていなかっただろう。
あの往復ビンタは、ただ感情にまかせたものではないと思う。アントニオ猪木の闘魂注入ビンタに比べても、ソフトタッチに見えたから。

2017年7月4日火曜日

安倍首相「こんな人たち」発言について

都議選で最も印象に残った一つは、安倍首相が秋葉原での応援演説で自分に対する「辞めろ」「帰れ」コールに向けた、「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかない」という発言だった。
「こんな人たち」とは、自分への批判者なのか、あのようなコールをする人達にのみ向けた言葉なのか、あるいは両者を含むのか、解釈は幾通りも考えられるだろうけれど、自分は、安倍首相のこれまでの言動も踏まえた上で、あの発言を以下のように受け取った。

「すべての国民の責任を負うべき総理大臣という立場の人が、政権に批判的な国民を敵視している。」

真意はどうであれ、安倍政権に対して批判的な立場の人間ならば余計に、あの発言をこのように受け取っても仕方がないんじゃないだろうか。

ただ、一方で、あいまいさを含んだ事柄を、一つの観点のみで切り捨ててしまう姿勢は、つつしまなければとも思う。そういった態度こそが、安倍晋三という人に抱く違和感の一つであると同時に、受け入れたくない時代の流れだと感じている。
自分にとって安倍政権は、2極化と独善の流れを象徴する存在だ。その流れに染まることなく、自分を保ちたいと思う。

ー2017年7月4日(火)

2017年6月9日金曜日

5/25(木)下北沢・GARDEN「HOBO CONNECTION 2017 ~HOBO SPECIAL~」全曲解説

●5/25(木)下北沢・GARDEN 
HOBO CONNECTION 2017 ~HOBO SPECIAL~
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND(ベース:寺岡信芳/ドラム:小宮山純平/ペダルスティール:宮下広輔)/仲井戸"CHABO"麗市/大槻ケンヂ
Photo by 三浦 麻旅子


1、「ランブリン・マン」リクオ  with HOBO HOUSE BAND(以後HHB)
HOBO HOUSE BANDがホストバンドとして参加した3公演(京都、名古屋、下北沢)では、オープンングの3、4曲は、リクオ with HOBO HOUSE BAND(以後HHB)としての4人の演奏をお届けしました。バンドにとっては今回の3公演ツアーが、新ドラマー・コミヤン(小宮山純平)の参加後初ステージだったこともあり、選曲とアレンジに関しては、本番当日のリハーサルまで試行錯誤を繰り返しました。選曲と曲順に関しては、舞台監督の丸山君とPAエンジニアの太田君の意見も参考にさせてもらいました。この日のオープニングナンバー、ニューオーリンズのセカンドライン・ビートを生かした「ランブリン・マン」の選曲はコミヤンの希望でもありました。

2、「僕らのパレード」リクオ with HHB
この曲も元々、HHBが参加する3公演の曲目には入ってなかった曲です。本番当日のリハーサルで音合わせして、手ごたえを感じたので、急遽、それまでの2公演でセットリストに入れていた「明日へ行く」と差しかえることしました。新ドラマーのコミヤンの京都、名古屋公演でのプレイが期待以上に素晴らしかったことが、思い切った決断をうながしました。

3、「希望のテンダネス」リクオ with HHB
今回のホーボーコネクションでは、ホスト役を全うするだけでなく、リクオというアーティストの現在進行形の姿を伝えることもテーマの一つにしていたので、自身のボーカル曲に関しては、なるべくオリジナルの新曲か、あるいは初トライ曲を選曲するよう心がけました。最近、日本のヒップホップを聴く機会が多く、その影響が反映された新曲です。

4、「グラデーション・ワールド」リクオ with HHB
初音ミクとデュエットするようなイメージで作り始めた新曲。四つ打ちキックの打ち込みによるアレンジを生音に変換するイメージでバンドアレンジしました。ステージに大槻君とチャボさんを迎え入れる前に、ロックやブルースの文脈とは違った要素が多く含まれる楽曲&アレンジのナンバーを敢えてセレクトすることを意識しました。

5、「ONLY YOU」大槻ケンヂ(vo)、リクオ with HHB
大槻くんはホーボーコネクション初参加。昨年11月の中川敬くんとのツアー「うたのありか2017」東京公演のゲストに出てもらった時が初対面。'90年代から彼のエッセイや小説、ソロアルバムが好きだっり、大槻くんと共通の知り合いが何人もいたりしたので、会う前から一方的に同世代の親しみを感じてました。オレと大槻君の共通点は、単位が足りなくて卒業できない夢を今だに見ること。中島らもさんのエッセイを読むと、らもさんもそうだったみたいです。今回の彼のボーカル曲は、全曲こちらからの提案。それらを受け入れてくれた大槻くんの懐の大きさを感じました。「ONLY YOU」は大槻くんの1st.ソロアルバムのタイトル曲で、田口トモロヲさんが在籍したパンクバンド「ばちかぶり」のカヴァー。大槻くんの1st.ソロアルバムの中でも、特に好きだった曲です。


6、「あのさぁ」大槻ケンヂ(vo)、リクオ with HHB
この曲が収録されている彼のソロアルバム「I STAND HERE FOR YOU」もオススメ。当時、オザケンの「天使たちのシーン」が収録されているのが意外で嬉しかったのを覚えてます。奇をてらうことなく曲の良さが伝わるアレンジと演奏を心がけました。

7、「プカプカ」大槻ケンヂ(vo)、リクオ with HHB
この曲の作者である西岡恭蔵さんは、自分が学生時代に初めて共演させてもらったプロのミュージシャン。恭蔵さんとは、デビュー前から何度もご一緒させてもらい、とてもよくしてもらっていたので、大槻君が昔から「プカプカ」をカヴァーしていることに繋がりを感じて、嬉しく思っていました。京都公演では、この曲を演奏する前のMCで、大槻くんが'90年代の頃の話として、当時憧れていたAV女優とデートの約束を取り付けて、下北沢の王将の前で待ち合わせしたときの逸話を面白おかしく聞かせてくれました。「プカプカ」は、ジャズシンガーの安田南さんがモチーフになって生まれた曲だというのが定説になっていますが、大槻君ってこの歌の主人公みたいに奔放な女の子に振り回されてるイメージがあって、それを裏付けるようなMCだと思いました。


8、「踊るダメ人間」大槻ケンヂ(vo)、リクオ with HHB
筋肉少女帯の代表曲の一つと言ってもいいのかな。演奏していて、子供にも受けそうだし、実は世代を超えて訴える曲だなあと思いました。こういう曲調を演奏する機会がないので、お客さんのリアクションも含めてすごく楽しくて新鮮でした。大槻くんは、この曲にチャボさんが参加することになったらどうしょうと不安に思っていたそうです。その話を聞いて、それもありだったなあと思いました。筋肉少女帯ヴァージョンのアレンジから離れて、HHBならではの演奏ができたかなと。しかし、本番でスイッチの入った大槻くんの豹変振りは笑えるくらい凄かったです。マスクを被らないマスクマンみたい。

9、「オーイっ!」仲井戸"CHABO"麗市(vo)、リクオ with HHB
毎回そうですが、チャボさんはステージに登場したその瞬間からカッコイイ。見惚れてしまいます。10代のファンだった頃から(今もファンですが)、そのイメージが変わらないんです。チャボさんと共演するミュージシャンは自分も含め皆10代の少年に戻ってしまう感じ。チャボさん自身が「永遠の少年性」を持つ続ける人なんだと思います。そんなチャボさんがユーモラスに「老い」を歌ったのが、この「オーイっ!」。こんなにカッコよくロックに「老い」歌える人、他に知らいないです。バンドの演奏も素晴らしかったんではないかと。

10、「君が僕を知ってる」仲井戸"CHABO"麗市(vo)、リクオ with HHB
RCサクセションのナンバー。選曲はチャボさん。清志郎さんは声のキーが高いので、男性がRCサクセションの曲をオリジナルキーで歌うのは大変なんです。だから普段チャボさんが清志郎さんVO曲を歌うときは、曲のキーを下げて歌うのが常なんですが、今回、チャボさんはあえて全曲をオリジナルキーで歌ったんです。そのことによって歌と演奏がよりエモーショナルに響き、さらにチャボさんのギタープレイがより際立つ結果をもたらしたと思います。一緒に演らせてもらって、「君が僕を知ってる」のギターリフのあの響きは、やっぱり原曲のGのキーでなきゃ出せないんだなと実感しました。

11、「たとえばこんなラブ・ソング」仲井戸"CHABO"麗市(vo)、リクオ with HHB
RCサクセションのナンバー。選曲はチャボさん。「君が僕を知ってる」同様、コアなRCファン、チャボさんファンにとっては、たまらない選曲。チャボさんによると、この曲をバンド編成で歌うのは多分今回が初だとのこと。光栄です。アレンジはあくまでもRCのオリジナルをベースにすることを心がけました。18の自分に教えてやりたいなあ。「今オレ、チャボとRCの曲やってるで」って。今回のチャボさん選曲の多くは、間違いなく清志郎さんが亡くなった5月であることを意識したものでした。

12、「Harvest Moon」仲井戸"CHABO"麗市(vo)、宮下広輔 、寺岡信芳 ※アコースティック・コーナー
ニール・ヤングのカヴァーをチャボさんの日本語意訳で。チャボさん選曲。元々この曲はチャボさんとペダルスティールのコースケ(宮下広輔)とのデュオで演奏予定だったのですが、チャボさんからの提案で寺さん(寺岡信芳)が急遽アコースティック・ベースで参加してトリオ編成に。これが大正解。舞台袖で聴いてたけど、素晴らしい化学反応、名演でした。チャボさんの日本語詞洋楽カヴァーって、言葉にリアリティーがあってオリジナルのように聴こえます。

13、「胸が痛いよ」仲井戸"CHABO"麗市、リクオ(vo) ※アコースティック・コーナー
自分と清志郎さんとの共作を、チャボさんのアコースティックギターとのデュオで。あの世ともつながった瞬間。


14、「Little Wing」仲井戸"CHABO"麗市(vo)、リクオ with HHB
ジミ・ヘンドリックスの名曲をチャボさんの日本語意訳で。「胸が痛いよ」の後を受けてのチャボさんの選曲。清志郎さんへの思いを歌っていることは明らかです。チャボさんの哀しみを湛えた歌と凄まじいギターに煽られて、京都、名古屋公演に続き、忘れられないセッションに。この演奏を体験できただけでも、イベントを企画した甲斐があったなあと。すごかった。

15、「永遠のロックンロール」仲井戸"CHABO"麗市、リクオ(vo) with HHB
原点回帰に向かうことで進行形であろうとする今の自分のスタンスを象徴する新曲です。この曲に、ロックンロールの楽しさ、開放感、希望を教えてくれた張本人のチャボさんがギターで参加してくれることの奇跡のような必然。ロックンロールの魔法が続いてることを実感。

16、「オマージュ - ブルーハーツが聴こえる」仲井戸"CHABO"麗市、リクオ(vo) with HHB
曲を作り始めた時から、ホーボーコネクションでのチャボさんとの共演までにこの曲を完成させて、チャボさんにギターを弾いてもらうことをイメージし、企んでいました。チャボさんとリハーサルに入った時点では、まだアレンジもしっかりと練れてなかったので、リハーサルと3公演の本番を通じて、バンドのメンバーとチャボさんと一緒に曲を育てていった感じ。この曲が完成して、チャボさんにギターを弾いてもらえた意味は、自分にとってすごく大きかったです。

17、「ロックンロール・ミュージック」仲井戸"CHABO"麗市(vo)、リクオ with HHB
惜しくも今年旅立ったロックンロールのオリジネーターの一人、チャック・ベリーの名曲をチャボさんの日本語訳で。前曲までの流れを意識した上でのチャボさん選曲。実は、当日リハーサルでチャボさんから突然、この曲のキーをGからAに上げてみたいとの提案があったんです。当日リハで曲のキーを変えることはめったにないのですが、こういった瞬間こそがルーティーンとは違うこのイベントの醍醐味。キーを上げることでチャボさんのボーカルがよりシャウトし、初期衝動の増した演奏に。コミヤンのスイングする8ビートも素晴らしく、名古屋公演では、この曲の演奏後にチャボさんがコミヤンを指して「ミスター・バックビート!!」と紹介。コミヤンにとっては最大の褒め言葉だったに違いないです。今回チャボさんに参加してもらった14曲中9曲の選曲はこちらからの提案で、残りの5曲が、オレの提案を受けた上でのチャボさんの選曲でした。チャボさんから送られてきた選曲を確認して、こちらの意図やテーマをすべて理解してもらえた気がしました。

18、「もう我慢できない」全員(大槻vo)
この選曲の反響が大きかったのが嬉しいです。JAGATARAの曲でチャボさんがギターを弾き、大槻くんが歌うという場面は、ある時代の邦楽ロックを通過した人にとっては歴史的瞬間ではないかと。チャボさんのギターとコースケのペダルスティールの掛け合いも大きな聴きどころになりました。そうそう、今回事前に大槻くんから、筋 少や特撮ではステージで曲終わりの締めを任されたことがない、という衝撃の事実を聞いていたので、今回大槻くんが参加してくれる曲の締めは、すべて彼に任せることにしました。京都・磔磔公演では、締めのジャンプのあまりの低空さに皆が唖然としましたが、曲を重ねるにつれ、GARDEN公演ではジャンプの飛距離も高まり、次第に曲締めのポーズにもバリエーションが生まれてるようになり、ライブ終盤では曲締めだけでお客さんを盛り上がるまでに成長、ライブの一つの見どころとなりました。




19、「明日なき世界」全員(大槻&リクオvo)
RCサクセションの洋楽カヴァーアルバム「COVERS」収録曲。オリジナルはバリー・マクガイア。日本では高石友也さんが先にカヴァー。清志郎さんの日本語詞は、この高石友也さんの日本語詞を元にアレンジされてます。もし10年前なら、この選曲をチャボさんに受け入れてもらえただろかと想像します。今だからこそ、チャボさんと一緒に演りたかった曲です。RCヴァージョンのこの曲のキーはE♭で、清志郎さんにしては低めのキー設定。今回、リハーサルのスタジオ入りする前に、チャボさんから「キーを1音半上げてGでやってみないか」との提案がありました。まさか、清志郎さんのボーカル曲でキーを上げることは想定してなかったので、最初は戸惑いましたが、ギリギリのキーで歌った結果、よりリアリティーの伝わる歌唱になって、演奏全体の「ぐっとくる感」も増した気がしました。今回のセッションでは曲のキーをどこに設定するかが、一つのポイントになりました。歌詞の中の「法律で真実は隠せやしねえ」っていうフレーズが、今も頭の中でリフレインし続けています。

20、「雨上がりの夜空に」全員(仲井戸vo)
チャボさんはホーボーコネクションの常連ですが、このイベントのステージで、RCの代表曲「雨上がりの夜空に」を演らせてもらうのは、今回が初。オレからのリクエストです。バンドアレンジはRCのライブアルバム「ラプソティー」をベースにしました。ドラムの四つ打ちキックのプレイントロをバックにした清志郎さんのMC「今日は最後までこんなに盛り上がってくれてありがとう!」の部分も、あえて完全コピー。チャボさんのギターのイントロリフをうながすMC「OK、チャボ!!」の部分は、「OK、チャボさん!!」と「さん」付けで。大槻くんとオレも歌詞の1部分を歌わせてもらいました。いやあ、盛り上がったー。

アンコール
1、「アイノウタ」仲井戸"CHABO"麗市、リクオ(vo) with HHB
オレのライブでの定番曲。チャボさんにはギタリストに徹してもらいました。シンガーのチャボさんだけでなく、かっこいいギタリストとしてのチャボさんも見たい。これは、RC時代からチャボさんを見続けてきたファン(もちろん、オレも含めて)共通の願いだと思います。ホーボーコネクションでは、ギタリストとしてのチャボさんもフィーチャーするよう常に心がけてます。

2、「不滅の男」全員(vo大槻)
大槻くんのソロアルバムにも収録されている、エンケンこと遠藤賢司さんの代表曲。この曲、オレも22年程前に1度だけ、阪神淡路大震災から間もない神戸のライブイベントでカヴァーさせてもらったことがあるんです。大槻くんがカヴァーする曲は、自分も好きだったり、自分もカヴァーしていたり、影響を受けた曲が多いんです。ステージ上で、大槻くん、チャボさんらとこの曲を演奏してるのが、ちょっと不思議で感慨深かったです。時を超え、世代を超え、点が線になり縁となる瞬間に居合わせているのだなあと。

3、「いい事ばかりはありゃしない」全員(仲井戸&大槻&リクオvo)
ホーボーコネクションでチャボさんと共演させてもらうときの定番曲。でも、この曲を誰とどこで演奏して歌うかによって、毎回曲の色合いが変わってゆくんです。セッション向きの名曲です。そう言えば昔、近藤房之助さんが「この歌こそ、日本の最高のブルースソングだ」って言ってたなあ。ホント、そう思います。アレンジは、あくまでもRCのスタジオ盤をベースにすることを心掛けました。この日のライブにふさわしいエンディング、大団円となりました。この曲含め、ホストバンドを務めたHOBO HOUSE BANDの演奏は素晴らしかったと思います。寺さん、コミヤン、コースケは、ホストバンドとして役割を全うした上で、それぞれが演奏者としての存在感をしっかり残してくれました。リハーサルから3公演を通してバンドが急成長してゆく姿に頼もしさを感じました。彼らとのこれからのライブも楽しみです。




以上、全曲解説でした。
こうやって書き記すことで、すべての選曲、曲順に、これだけの思いと意味合いが込められていたのだなあと、我が事ながら、再認識しました。それらを受け止めて応えてくれた出演者の皆さんにはリスペクトと感謝の気持ちで一杯です。
「HOBO CONNECTION 2017」10公演のすべてが、出会い、再会、ときめきに満ちた素晴らしい一期一会となりました。遅ればせながら、足を運んでくれたお客さんと関わってくれたすべての皆さんに心から感謝します。そして、これからもよろしくお願いします。ー リクオ

ー 217年6月9日(金)

【リクオ with HOBO HOUSE BANDライブ・スケジュール】
⚫︎7/14(金)渋谷・BYG 03-3461-8574
http://www.byg.co.jp/
ゲスト:高木克(ソウル・フラワー・ユニオン)
前売り¥4000 当日¥4500 開場18:30 開演19:30 
メール予約: bygrock1969@yahoo.co.jp
件名に(チケット予約+公演日)を記入して下さい。本文には氏名、電話番号、予約枚数を記入して下さい2人予約するなら2人とも名前電話番号を記入して下さい。予約完了しましたら、詳細をメールで返信いたします。メール送信の次の日までには返信いたします。

●8/19(土)大阪・martha(dinning cafe+goods)TEL 06-6446-2314
http://www.marthanet.com
「リクオ・プレミアムLive 〜真夏のマーサ編〜」
出演:リクオ with HOBO HOUSE BAND(ベース:寺岡信芳/ドラム:小宮山純平/ペダルスティール:宮下広輔)
¥4500 当日¥5000 (いずれも+1Drink) 開場18:00 開演19:00
【学割チケット】¥2500(別途1ドリンク代必要※大学生、専門学校生まで)※入場時に学生証の提示をお願いいたします。中学生以下入場無料※ただし、必ず保護者同伴でお越しください。
電話予約:011-623-0666
6/19(月)よりメール予約受付開始
ご予約はマーサHP内の予約専用フォームからお願いします。
http://www.marthanet.com

リクオ・ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/

2017年2月20日月曜日

リアル2ー 水戸にて9年振りに「名前を知らないけれど」を歌う

昨日は、東北&北関東4ヶ所ツアー(石巻、仙台、いわき、水戸)の最終日、水戸での2年振りのライブだった。ライブ会場のペーパームーンは、初めての会場だったけれど、もう何度も訪れたことがあるような親しみと懐かしさを感じさせる空間だった。
風邪が治りきらず、体調はあまりよくなかったけれど、客席からの熱い思いをエネルギーにして、ストーリーのある理想的なライブ空間を皆で作り上げることができたと思う。

昨夜のライブを主催してくれた「地元でライ部」代表、甲斐君との出会いは9年近く前に遡る。約4年振りに訪れた水戸での空席だらけのライブに来てくれたお客さんの1人が甲斐君だった。その夜のことは当時のブログに書き残されている。
http://rikuonet.blogspot.jp/2008/09/blog-post_24.html?m=0

そのライブの半年後、甲斐君は水戸でオレのライブを企画してくれて、その後、「もっと地方にリアルな音楽を」との思いで「地元でライ部」を立ち上げ、オレだけでなく、さまざまなツアーミュージシャンのライブを水戸で企画するようになった。昨夜のライブ空間は、「地元でライ部」の長年の積み重ねがあってこそ成り立った、一つの結晶のようなものだ。

昨夜は、感謝の気持ちも込めて、9年前のライブで甲斐君が客席からリクエストしてくれた曲「名前を知らないけれど」を、その日以来9年振りに弾き語った。


誰に頼まれたわけでもなく 今日もメロディ口づさむ
抜け殻みたいな言葉に 何度も息を吹きかけた

じっとしたままで いるなんて
とても出来やしなかったよ だから今

君に会いに来た 名前も知らないけれど

誰に頼まれたわけでもなく 今日もリズムを打ち鳴らす
東へ西へとかけ回り 余計なマネをくり返す

乾いているから濡れたいよ
翼はないけど飛びたいな だから今

君に会いに来た 名前も知らないけれど 

ー「名前も知らないけれど」より

その言葉とメロディーは、今の自分にもリアルに響いた。20数年前の自分と今の自分が重なった。
今も当時と変わらず、もがいているなあ、「もんもん」を抱えているなあと実感した。「もんもん」を燃料にしたり、ネタにして笑い飛ばす術は、当時よりは身についたかもしれないけれど、抱えている「もんもん」は今もそんなに変わらない気がする。
その思いを歌に変え、ライブで昇華させ、それを受け止めてくれる人がいるお陰で、自分は救われてきたし、どうにかここまでやってこれた。

昨夜のお客さんの中には、甲斐くん以外にも、9年前の水戸ライブに来てくれていたご夫婦がおられて、感慨深かった。あの日のライブがなければ、昨夜のライブも存在しなかった。
誇らしい夜だった。
これからも「もんもん」を糧に「リアル」を積み重ね、軽やかに方々うろつき回ってやろうと思う。

2017年1月31日火曜日

キョンさん(Dr.kyOn)のこと

2日から始まるリクオ with HOBO HOUSE BAND『Hello!Live』発売記念ツアー(2/2名古屋、2/3京都、2/5東京)に、バンドの一員として参加してくれるキョン(Dr.kyOn)さんと出会ったのは、'91年初頭だったと思うから、もう四半世紀を超える付き合いになる。その存在を認識したのはもっと前で、ボ・ガンボスが結成後初めて関西ツアーに来た時だから、もう30年くらい前かあ。オレはまだ大学生でした。

ボ・ガンボスの体験は強烈だった。当時、自分がまさに影響を受けている最中だったニューオーリンズのガンボ・ミュージックを、彼らは、祝祭感に満ちたロックンロールとして、見事に自分達のオリジナルに昇華していた。
そんな様を見せつけられて、はるか先を越されたような嫉妬を感じつつも、とうとう日本にもこんなバンドが登場したんだという興奮を感じたのを覚えている。関西の土壌から生まれたバンドであったことにも、同じ歴史を共有しているような親しみや希望を感じた。

当時のボ・ガンボスのライブには、しょっちゅう足を運んだ。同じ時期に、山口富士夫さん率いるティア・ドロップスの関西ライブにもよく足を運んでいて、そこにはボ・ガンボス結成直後の、まだ短髪で素朴さを残したキョンさんがピアノでサポート参加していた。
その頃の自分は何者でもなかったけれど、勝手にキョンさんのことをライバル視していた。時には、自分のピアノの方がキョンさんよりもいけてるんじゃないかと勘違いしたこともあったけれど、そんな思いはすぐに打ち砕かれた。ライブに足を運ぶたびに、キョンさんの演奏技術が急速に上がってゆくのを目の当たりにしたからだ。それと同時に見た目や振る舞いもどんどん洗練されて、キョンさんはさらにカッコ良くなっていった。バンドの勢いも見る度に加速する一方だった。
ボ・ガンボスはインディーズながら瞬く間に注目を浴び、自分の認識ではメジャーデビュー前の結成1、2年の頃には、バンドとしての最初のピークを既に迎えていたように思う。今思うと、その存在に影響を受けた者にとって、ボ・ガンボスは、ただの音楽ではなく、態度や姿勢を示す1つのムーブメントだったように感じる。

キョンさんとの出会いの場は、今回の公演場所の1つでもある京都の磔磔だった。ボ・ガンボスから2年程遅れてメジャーデビューした直後の磔磔での自分のワンマンライブに、キョンさんがお客として会場に現れたのだ。
自分は、ライブ中に既にその存在を客席後方に確認していた。キョンさんが自分のことを知ってくれていて、ライブに足を運んでくれたという事実にワクワクした。

ホント、若気の至りなのだが、自分はそのときのライブのアンコールで無茶な行動に出た。
「じゃあ、飛び入りゲストを紹介します。Dr.kyOn!」
なんの打ち合わせも了解もなく、ステージから勝手にキョンさんを紹介してしまったのだ。
名指しされたキョンさんは、客席後方からすくっと立ち上がり、躊躇なく歩を進め、ステージに登場した。目の前にあらわれたキョンさんは、大きくて華があった。でも、威圧感はなかった。

セッション曲には友部正人さんの日本語詞によるボブ・ディランの「I Shall be Released」を選んだ。
キョンさんにはピアノを弾いてもらうことにして、自分はピアノを離れてアコーディオンを抱えた。その場でキョンさんに曲のキーと、原曲よりもずっと速いテンポ、そして2拍目のウラにアクセントを置くセカンドライン調のアレンジを口頭で伝えた。生涯の中でも忘れられないセッションの1つとなった。
その初対面で、キョンさんはオレのすべてを受け入れてくれたような気がした。

デビューから4年程を経て、活動が思うようにいかず相当に煮詰まっていた頃、当時、ボ・ガンボスの解散を発表したばかりのキョンさんに連絡をとり、相談に乗ってもらったことがある。そのときに何の話をしたのかは、もうよく覚えていないけれど、キョンさんが「今、SMAPがいいから聴いてみるといいよ」と言っていたのが、とても印象に残っている。話していて、キョンさんの音楽の嗜好がとても幅広く、さまざまな方向にアンテナをはっているのが伝わった。
相談を受けて、キョンさんはオレのために色んなミュージシャンを集めて、セッションの場をつくってくれた。そのときに始めて共演したのが、今回のツアーにも参加し、長年自分の活動に付き合ってくれているベースの寺さん(寺岡信芳)だ。これまでの自分のステージ、アルバムの中で最も多くのベースを弾いてくれているのは、圧倒的に寺さんだ。

90年代後半からは、キョンさんと一緒に定期的に「PIANOMAN NIGHT」というピアノ奏者が集まるライブイベントを企画するようになった。そのイベントが、「CRAZY FINGERS」の結成につながった。複数のピアノ奏者が打楽器的にピアノを合奏するこのユニットは、自分のこれまでのキャリアの中でも、最もユニークで多いに盛り上がった企画だった。CRAZY FINGERSはライブだけでなく、3枚のアルバムと1枚のDVDを残した。



その後もキョンさんとは、さまざまな場所で、いろんな形で共演を繰り返している。キョンさんには多くの引き出しがあって、共演の度に開ける引き出しが違っていたり、さらに引き出しの数が増えていたりするので、毎回が新鮮で、共演の度に刺激をもらい続けている。

バンドの中でのキョンさんは指揮者のような存在だ。その中で自分は、より自由に泳がせてもらっている感じだ。キョンさんの参加によって、バンドには華やかさとメリハリ、そしてロックのガッツが注入された。
本当は、キョンさんとはHOBO HOUSE BANDで、もっとツアーができたらと思う。それだけに、今回の3公演は貴重で特別だ。色んな意味で、次につなげられたらと思う。

このブログを書きながら、キョンさんが自分のキャリアに与えてくれた影響の大きさを、あらためて感じている。
今では、キョンさんをライバルというのはおこがましい。心から尊敬すべき存在であり、自分の良き理解者だと思っている。
ー2017年1月31日(火)

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★リクオ・アルバム『Hello!Live』発売記念ライブ 〜 Hello!LIVE 2017 〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋 TOKUZO 開場18:30 開演19:30
●2/3(金)京都 磔磔 開場18:00 開演19:00
●2/5(日)東京 Zher the zoo YOYOGI 開場17:00 開演18:00
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 
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★リクオwith HOBO HOUSE BAND動画
●「あれから」

●「(what's so funny'bout)peace, love and understanding」

●アルバム告知トレイラー

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■CD「Hello!Live」HR-03¥2800(税抜)15曲入り
■DVD「Hello!Live Movie」HR-04 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906
■アルバム特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live/


2017年1月29日日曜日

絶望的な忘れっぽさを自覚して、逡巡しながら歩み続けるー「あれから」のこと

昨年リリースしたアルバム「Hello!」と先日リリースしたばかりのライブ盤「Hello!Live」に収録した「あれから」という曲は、自分自身にも問いかける曲だ。1年半前に曲ができたとき、6年近く前の、あのときの何とも言えない気持ちと、それ以降抱え続けようした問いかけを、4年の歳月を経て歌にできた気がした。https://youtu.be/ygP42ajCZc4




あれから何を終わらせたんだ
あれから何をはじめたんだろう 
ー「あれから」より

人は忘れる生き物だ。その忘れっぽさが救いになる一方で、すぐに忘れて同じ過ちを繰り返してしまうことに、絶望を感じたりもする。SNSの時代に突入してからは、自分も含めて、人々の忘れっぽさに拍車がかかった気がする。
忘れないためには、意志や知性が必要なんだと思う。増々スピードアップして大量の情報が流れてゆく時代の中で、時には立ち止まり、振り返り、逡巡する時間の大切さを、より感じるようになった。あの哀しみ、不安、畏れ、後悔、憤り、後ろめたさを忘れてしまえば、自分達の未来は閉ざされてしまうと思う。

この6年近い歳月の中で、自分が心掛けたのは「逡巡しながら、歩み続ける」ことだった気がする。極端に振り切って思考停止することを避け、グレイゾーンを行き来しながら、正しいと思う方向に向かう。もし途中で、その方向が間違いだったと思えば、改めることのできる柔軟性を維持する。実践できたかどうかは別にして、そうありたいと思い続けてきた。
その歩みの途中では、「選択」と「別れ」を避けることはできない。3.11以降の話で言えば、自分にとっては、例えば原子力発電所が別れを告げるべき存在だった。
「選択」と「別れ」には、いつも「痛み」がともなう。その「痛み」を忘れちゃいけない、「選択」からはずされた存在も忘れちゃいけない、どの方向に対しても共感のアンテナを鈍らせちゃいけないと思う。その姿勢をナイーブと言われるのなら、自分はナイーブであり続けたいと思う。
逡巡を繰り返しながらも、そうした自分の考えに関してはブレがない気がする。

あれから何を終わらせたんだ
僕らは今もためらいの中
夜空は星をなくしたまま
僕らは明日を描き出すんだ
ー「あれから」より

オバマ大統領は「民主主義はあたなだ」という言葉を残して、ホワイトハウスを去っていった。その言葉に誠実さを感じる。誰かが与えてくれた単純な物語に身を委ねたり、救世主やカリスマを求める時代が、良い時代だと思えない。
グラデーションに目を凝らしながら、丁寧に物語を紡いでゆこう、絶望的な忘れっぽさを自覚して、逡巡しながら歩み続けようと思う。
ー2017年1月29日

★リクオ・アルバム発売記念スペシャル・ライブ 〜Hello!LIVE 2017〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋・TOKUZO(得三)
●2/3(金)京都・磔磔
●2/5(日)東京代々木・Zher the zoo YOYOGI
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 


●CD「Hello!Live」HR-003¥2800(税抜)15曲入り
●DVD「Hello!Live Movie」HR-004 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906

●『Hello!Live』特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live

2017年1月24日火曜日

いくつになっても、割り切れない思いは割り切れないまま物語は続いてゆく

アルバムのリリース前後と、それに伴う発売記念ライブの前は、普段より気持ちが不安定になる。期待と現実のギャップに向き合わされるからだ。
思えば、20代のデビューの頃からずっとこの感じを繰り返している。それでも、いまだに期待し続け、トライし続けているのだから、自分でも懲りない奴だと思う。去年、自主レーベルを立ち上げてからは、より現実に向き合う機会が増えて、気持ちが振り回されることが多くなった。

活動をインディーズに移行してからの一時、作品のリリースを控えようかと考えたことがあった。リリースの度に、期待が裏切られ、自尊心を傷つけられるのがつらくなったからだ。限られた条件の中で、思うような制作ができないというジレンマにも悩まされた。
それならば、さらにツアー暮らしに没頭して、集まってくれた目の前のお客さん達と一期一会を積み重ねた方が、ストレスも少なく充実感を得られるし、精神的にも良いと思った。

でも、40代半ばを過ぎたあたりから、また次第に考えが変わり始めた。限られた時間を意識するようになって、「もう、そんなこと言うてられへんな。自分の欲求に正直に向き合った方が前向きやし、さらに年とってからすねたくないもんな」と考えるようになった。

長くツアー暮らしを続ける程、全国に存在する今まで自分の活動を応援、サポートしてくれた人達(もちろんお客さんも含みます)に喜んでもらいたい、各地でずっとライブを企画してくれる人達が、もう少し楽にお客さんを呼べるくらいの知名度と動員力を得て、恩返ししたいとの思いも強くなった。

ここにきて、創作意欲、制作意欲は衰えるどころか、高まり続けていて、それに平行するように承認欲求も高まっている。この年になって「承認欲求」なんて言葉を自分にあてはめることに恥ずかしさを覚えるけれど、事実だから仕方ない。多分、閉じていた蓋を開いたからだと思う。
その結果、やっかいな感情に振り回される機会が増えた。「まるで思春期みたいやな」と自分のことが笑える。
この個人的なある種のストレスと不穏な社会状況が創作につながっていて、ネタには困ることがない。そのネタをいかに料理し表現するか、試行錯誤している最中だ。
若い頃の自分と今の自分に違いがあるとすれば、そういう自分自身をネタにして笑えるタフさや俯瞰を身につけたことかもしれない。いや、それも思い上がりかな。

ここにきて、楽しみながらあがいてやろう、格好わるさも含めたその様をオープンにして見てもらえばいいんじゃないかと思う。そういう姿を若い人達はもちろん、同性代の人達にも見てもらいたい。いくつになっても、割り切れない思いは割り切れないまま物語は続いてゆくのだ。
そうしたすべての思いを音楽に昇華できたら最高だ。

最後に大切な告知です。
1月18日、自主レーベル『Hello Records』よりアルバム『Hello!Live/リクオ with HOBO HOUSE BAND』が発売となりました。ライブ会場限定販売でDVD『Hello!Live Movie』も同時発売となります。
昨年リリースしたアルバム『Hello!』のポップでカラフルな世界に、ライブの臨場感とロックのガッツが加わった、新境地となる作品だと自負してます。皆でつくりあげたあの素晴しい夜を、こうやって作品として残せてホントによかったです。多くの人達との関わりの中で、この作品を生み出せたことを誇りに思ってます。
2月に入ればリクオ with HOBO HOUSE BANDによるアルバム発売記念のライブがが3公演(2/2名古屋、2/3京都、2/5東京)開催されます。アルバム収録曲以外に新曲もこのツアーでの重要なレパートリーになります。ホント重要なライブなんで、ぜひ立ち会って下さい。お待ちしてます。http://www.rikuo.net/live-information/ 
皆さん、2017年も、応援よろしくお願いします。いい年にしましょう。
ー 2017年1月24日(火)





★リクオ・アルバム発売記念スペシャル・ライブ 〜Hello!LIVE 2017〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋・TOKUZO(得三)
●2/3(金)京都・磔磔
●2/5(日)東京代々木・Zher the zoo YOYOGI
詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 
【メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2

CD「Hello!Live」HR-003¥2800(税抜)15曲入り
DVD「Hello!Live Movie」HR-004 ¥2800(税抜)21曲入り

- 配信 -
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/_/default/p/69654
- 通販 -
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89 ※1/24現在在庫切れ

★アルバム特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live/