2017年1月31日火曜日

キョンさん(Dr.kyOn)のこと

2日から始まるリクオ with HOBO HOUSE BAND『Hello!Live』発売記念ツアー(2/2名古屋、2/3京都、2/5東京)に、バンドの一員として参加してくれるキョン(Dr.kyOn)さんと出会ったのは、'91年初頭だったと思うから、もう四半世紀を超える付き合いになる。その存在を認識したのはもっと前で、ボ・ガンボスが結成後初めて関西ツアーに来た時だから、もう30年くらい前かあ。オレはまだ大学生でした。

ボ・ガンボスの体験は強烈だった。当時、自分がまさに影響を受けている最中だったニューオーリンズのガンボ・ミュージックを、彼らは、祝祭感に満ちたロックンロールとして、見事に自分達のオリジナルに昇華していた。
そんな様を見せつけられて、はるか先を越されたような嫉妬を感じつつも、とうとう日本にもこんなバンドが登場したんだという興奮を感じたのを覚えている。関西の土壌から生まれたバンドであったことにも、同じ歴史を共有しているような親しみや希望を感じた。

当時のボ・ガンボスのライブには、しょっちゅう足を運んだ。同じ時期に、山口富士夫さん率いるティア・ドロップスの関西ライブにもよく足を運んでいて、そこにはボ・ガンボス結成直後の、まだ短髪で素朴さを残したキョンさんがピアノでサポート参加していた。
その頃の自分は何者でもなかったけれど、勝手にキョンさんのことをライバル視していた。時には、自分のピアノの方がキョンさんよりもいけてるんじゃないかと勘違いしたこともあったけれど、そんな思いはすぐに打ち砕かれた。ライブに足を運ぶたびに、キョンさんの演奏技術が急速に上がってゆくのを目の当たりにしたからだ。それと同時に見た目や振る舞いもどんどん洗練されて、キョンさんはさらにカッコ良くなっていった。バンドの勢いも見る度に加速する一方だった。
ボ・ガンボスはインディーズながら瞬く間に注目を浴び、自分の認識ではメジャーデビュー前の結成1、2年の頃には、バンドとしての最初のピークを既に迎えていたように思う。今思うと、その存在に影響を受けた者にとって、ボ・ガンボスは、ただの音楽ではなく、態度や姿勢を示す1つのムーブメントだったように感じる。

キョンさんとの出会いの場は、今回の公演場所の1つでもある京都の磔磔だった。ボ・ガンボスから2年程遅れてメジャーデビューした直後の磔磔での自分のワンマンライブに、キョンさんがお客として会場に現れたのだ。
自分は、ライブ中に既にその存在を客席後方に確認していた。キョンさんが自分のことを知ってくれていて、ライブに足を運んでくれたという事実にワクワクした。

ホント、若気の至りなのだが、自分はそのときのライブのアンコールで無茶な行動に出た。
「じゃあ、飛び入りゲストを紹介します。Dr.kyOn!」
なんの打ち合わせも了解もなく、ステージから勝手にキョンさんを紹介してしまったのだ。
名指しされたキョンさんは、客席後方からすくっと立ち上がり、躊躇なく歩を進め、ステージに登場した。目の前にあらわれたキョンさんは、大きくて華があった。でも、威圧感はなかった。

セッション曲には友部正人さんの日本語詞によるボブ・ディランの「I Shall be Released」を選んだ。
キョンさんにはピアノを弾いてもらうことにして、自分はピアノを離れてアコーディオンを抱えた。その場でキョンさんに曲のキーと、原曲よりもずっと速いテンポ、そして2拍目のウラにアクセントを置くセカンドライン調のアレンジを口頭で伝えた。生涯の中でも忘れられないセッションの1つとなった。
その初対面で、キョンさんはオレのすべてを受け入れてくれたような気がした。

デビューから4年程を経て、活動が思うようにいかず相当に煮詰まっていた頃、当時、ボ・ガンボスの解散を発表したばかりのキョンさんに連絡をとり、相談に乗ってもらったことがある。そのときに何の話をしたのかは、もうよく覚えていないけれど、キョンさんが「今、SMAPがいいから聴いてみるといいよ」と言っていたのが、とても印象に残っている。話していて、キョンさんの音楽の嗜好がとても幅広く、さまざまな方向にアンテナをはっているのが伝わった。
相談を受けて、キョンさんはオレのために色んなミュージシャンを集めて、セッションの場をつくってくれた。そのときに始めて共演したのが、今回のツアーにも参加し、長年自分の活動に付き合ってくれているベースの寺さん(寺岡信芳)だ。これまでの自分のステージ、アルバムの中で最も多くのベースを弾いてくれているのは、圧倒的に寺さんだ。

90年代後半からは、キョンさんと一緒に定期的に「PIANOMAN NIGHT」というピアノ奏者が集まるライブイベントを企画するようになった。そのイベントが、「CRAZY FINGERS」の結成につながった。複数のピアノ奏者が打楽器的にピアノを合奏するこのユニットは、自分のこれまでのキャリアの中でも、最もユニークで多いに盛り上がった企画だった。CRAZY FINGERSはライブだけでなく、3枚のアルバムと1枚のDVDを残した。



その後もキョンさんとは、さまざまな場所で、いろんな形で共演を繰り返している。キョンさんには多くの引き出しがあって、共演の度に開ける引き出しが違っていたり、さらに引き出しの数が増えていたりするので、毎回が新鮮で、共演の度に刺激をもらい続けている。

バンドの中でのキョンさんは指揮者のような存在だ。その中で自分は、より自由に泳がせてもらっている感じだ。キョンさんの参加によって、バンドには華やかさとメリハリ、そしてロックのガッツが注入された。
本当は、キョンさんとはHOBO HOUSE BANDで、もっとツアーができたらと思う。それだけに、今回の3公演は貴重で特別だ。色んな意味で、次につなげられたらと思う。

このブログを書きながら、キョンさんが自分のキャリアに与えてくれた影響の大きさを、あらためて感じている。
今では、キョンさんをライバルというのはおこがましい。心から尊敬すべき存在であり、自分の良き理解者だと思っている。
ー2017年1月31日(火)

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★リクオ・アルバム『Hello!Live』発売記念ライブ 〜 Hello!LIVE 2017 〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋 TOKUZO 開場18:30 開演19:30
●2/3(金)京都 磔磔 開場18:00 開演19:00
●2/5(日)東京 Zher the zoo YOYOGI 開場17:00 開演18:00
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 
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★リクオwith HOBO HOUSE BAND動画
●「あれから」

●「(what's so funny'bout)peace, love and understanding」

●アルバム告知トレイラー

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■CD「Hello!Live」HR-03¥2800(税抜)15曲入り
■DVD「Hello!Live Movie」HR-04 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906
■アルバム特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live/


2017年1月29日日曜日

絶望的な忘れっぽさを自覚して、逡巡しながら歩み続けるー「あれから」のこと

昨年リリースしたアルバム「Hello!」と先日リリースしたばかりのライブ盤「Hello!Live」に収録した「あれから」という曲は、自分自身にも問いかける曲だ。1年半前に曲ができたとき、6年近く前の、あのときの何とも言えない気持ちと、それ以降抱え続けようした問いかけを、4年の歳月を経て歌にできた気がした。https://youtu.be/ygP42ajCZc4




あれから何を終わらせたんだ
あれから何をはじめたんだろう 
ー「あれから」より

人は忘れる生き物だ。その忘れっぽさが救いになる一方で、すぐに忘れて同じ過ちを繰り返してしまうことに、絶望を感じたりもする。SNSの時代に突入してからは、自分も含めて、人々の忘れっぽさに拍車がかかった気がする。
忘れないためには、意志や知性が必要なんだと思う。増々スピードアップして大量の情報が流れてゆく時代の中で、時には立ち止まり、振り返り、逡巡する時間の大切さを、より感じるようになった。あの哀しみ、不安、畏れ、後悔、憤り、後ろめたさを忘れてしまえば、自分達の未来は閉ざされてしまうと思う。

この6年近い歳月の中で、自分が心掛けたのは「逡巡しながら、歩み続ける」ことだった気がする。極端に振り切って思考停止することを避け、グレイゾーンを行き来しながら、正しいと思う方向に向かう。もし途中で、その方向が間違いだったと思えば、改めることのできる柔軟性を維持する。実践できたかどうかは別にして、そうありたいと思い続けてきた。
その歩みの途中では、「選択」と「別れ」を避けることはできない。3.11以降の話で言えば、自分にとっては、例えば原子力発電所が別れを告げるべき存在だった。
「選択」と「別れ」には、いつも「痛み」がともなう。その「痛み」を忘れちゃいけない、「選択」からはずされた存在も忘れちゃいけない、どの方向に対しても共感のアンテナを鈍らせちゃいけないと思う。その姿勢をナイーブと言われるのなら、自分はナイーブであり続けたいと思う。
逡巡を繰り返しながらも、そうした自分の考えに関してはブレがない気がする。

あれから何を終わらせたんだ
僕らは今もためらいの中
夜空は星をなくしたまま
僕らは明日を描き出すんだ
ー「あれから」より

オバマ大統領は「民主主義はあたなだ」という言葉を残して、ホワイトハウスを去っていった。その言葉に誠実さを感じる。誰かが与えてくれた単純な物語に身を委ねたり、救世主やカリスマを求める時代が、良い時代だと思えない。
グラデーションに目を凝らしながら、丁寧に物語を紡いでゆこう、絶望的な忘れっぽさを自覚して、逡巡しながら歩み続けようと思う。
ー2017年1月29日

★リクオ・アルバム発売記念スペシャル・ライブ 〜Hello!LIVE 2017〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋・TOKUZO(得三)
●2/3(金)京都・磔磔
●2/5(日)東京代々木・Zher the zoo YOYOGI
【全公演メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2
ライブ詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 


●CD「Hello!Live」HR-003¥2800(税抜)15曲入り
●DVD「Hello!Live Movie」HR-004 ¥2800(税抜)21曲入り※ライブ会場限定販売
ー通販ー
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89
ー配信ー
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/news/84906

●『Hello!Live』特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live

2017年1月24日火曜日

いくつになっても、割り切れない思いは割り切れないまま物語は続いてゆく

アルバムのリリース前後と、それに伴う発売記念ライブの前は、普段より気持ちが不安定になる。期待と現実のギャップに向き合わされるからだ。
思えば、20代のデビューの頃からずっとこの感じを繰り返している。それでも、いまだに期待し続け、トライし続けているのだから、自分でも懲りない奴だと思う。去年、自主レーベルを立ち上げてからは、より現実に向き合う機会が増えて、気持ちが振り回されることが多くなった。

活動をインディーズに移行してからの一時、作品のリリースを控えようかと考えたことがあった。リリースの度に、期待が裏切られ、自尊心を傷つけられるのがつらくなったからだ。限られた条件の中で、思うような制作ができないというジレンマにも悩まされた。
それならば、さらにツアー暮らしに没頭して、集まってくれた目の前のお客さん達と一期一会を積み重ねた方が、ストレスも少なく充実感を得られるし、精神的にも良いと思った。

でも、40代半ばを過ぎたあたりから、また次第に考えが変わり始めた。限られた時間を意識するようになって、「もう、そんなこと言うてられへんな。自分の欲求に正直に向き合った方が前向きやし、さらに年とってからすねたくないもんな」と考えるようになった。

長くツアー暮らしを続ける程、全国に存在する今まで自分の活動を応援、サポートしてくれた人達(もちろんお客さんも含みます)に喜んでもらいたい、各地でずっとライブを企画してくれる人達が、もう少し楽にお客さんを呼べるくらいの知名度と動員力を得て、恩返ししたいとの思いも強くなった。

ここにきて、創作意欲、制作意欲は衰えるどころか、高まり続けていて、それに平行するように承認欲求も高まっている。この年になって「承認欲求」なんて言葉を自分にあてはめることに恥ずかしさを覚えるけれど、事実だから仕方ない。多分、閉じていた蓋を開いたからだと思う。
その結果、やっかいな感情に振り回される機会が増えた。「まるで思春期みたいやな」と自分のことが笑える。
この個人的なある種のストレスと不穏な社会状況が創作につながっていて、ネタには困ることがない。そのネタをいかに料理し表現するか、試行錯誤している最中だ。
若い頃の自分と今の自分に違いがあるとすれば、そういう自分自身をネタにして笑えるタフさや俯瞰を身につけたことかもしれない。いや、それも思い上がりかな。

ここにきて、楽しみながらあがいてやろう、格好わるさも含めたその様をオープンにして見てもらえばいいんじゃないかと思う。そういう姿を若い人達はもちろん、同性代の人達にも見てもらいたい。いくつになっても、割り切れない思いは割り切れないまま物語は続いてゆくのだ。
そうしたすべての思いを音楽に昇華できたら最高だ。

最後に大切な告知です。
1月18日、自主レーベル『Hello Records』よりアルバム『Hello!Live/リクオ with HOBO HOUSE BAND』が発売となりました。ライブ会場限定販売でDVD『Hello!Live Movie』も同時発売となります。
昨年リリースしたアルバム『Hello!』のポップでカラフルな世界に、ライブの臨場感とロックのガッツが加わった、新境地となる作品だと自負してます。皆でつくりあげたあの素晴しい夜を、こうやって作品として残せてホントによかったです。多くの人達との関わりの中で、この作品を生み出せたことを誇りに思ってます。
2月に入ればリクオ with HOBO HOUSE BANDによるアルバム発売記念のライブがが3公演(2/2名古屋、2/3京都、2/5東京)開催されます。アルバム収録曲以外に新曲もこのツアーでの重要なレパートリーになります。ホント重要なライブなんで、ぜひ立ち会って下さい。お待ちしてます。http://www.rikuo.net/live-information/ 
皆さん、2017年も、応援よろしくお願いします。いい年にしましょう。
ー 2017年1月24日(火)





★リクオ・アルバム発売記念スペシャル・ライブ 〜Hello!LIVE 2017〜
【出演】リクオ with HOBO HOUSE BAND
Dr.kyOn(キーボード&ギター)/椎野恭一(ドラム)/寺岡信芳(ベース)/宮下広輔(ペダルスティール)/真城めぐみ(コーラス)
●2/2(木)名古屋・TOKUZO(得三)
●2/3(金)京都・磔磔
●2/5(日)東京代々木・Zher the zoo YOYOGI
詳細→ http://www.rikuo.net/live-information/ 
【メール予約フォーム】
https://goo.gl/forms/z5zOKVcyD61Q9yjT2

CD「Hello!Live」HR-003¥2800(税抜)15曲入り
DVD「Hello!Live Movie」HR-004 ¥2800(税抜)21曲入り

- 配信 -
OTOTOY高音質ハイレゾ配信→ http://ototoy.jp/_/default/p/69654
- 通販 -
タワーレコード・オンライン→ http://tower.jp/item/4406294
Amazon→ http://amzn.asia/f4AEH89 ※1/24現在在庫切れ

★アルバム特設サイト→ http://www.rikuo.net/hello-live/